第22話 NOと言われるはずがない
※ この夢に登場する小説家は実在しますが、あくまで夢なので、現実の御本人とは全く関係ありません。実際には顔も声も知らず、名前しか共通点がありません。
万が一、迷惑をかけるといけないので、名前も作品名も伏せております。
ギャラリーを見に来ている。
私の好きな画家の個展だ。
正確には、この画家は小説家としても活躍しており、私は小説家としてのこの人物のファンだ。
展示作品はみな写真を撮っても良いことになっているので、私もたくさん撮った。
奥のほうの小さな展示室を観て、そこでも写真を撮ろうとしていると、なんと本人登場!
話しかけてみたいなどとは思わなかった。
ただ、狭い部屋でご本人に見られながら作品を撮影するのはとても緊張するし何故か恥ずかしい。
そこで、やっぱり挨拶がてら何かお話ししてみよう。そうすれば恥ずかしさが幾らか和らぐだろう、と思った。しかし何を話せばいいのか。
展示物には何故か、同じ作者の小説と関係ありそうなものは見当たらなかった。ここで小説のファンだと言っても大丈夫だろうか?
迷った挙句私が言えたのはこれだけ。
「作品の写真を撮っても構いませんか?」
(現実なら挨拶も無しにそれはないだろう。気持ちだけむだに逡巡するわりに必要な段取りをすっとばすのは夢の中の言動でよくある)
展示物の撮影OKなのは知っていた。
ずいぶん昔に声が出なくなった時(現実)に似た感覚が喉のあたりにあった。もしかしたら声が出ていなかったかもしれない。
そのせいか、作者は答えてくれない。
私はもっとお腹に力を入れて、もう一度言ってみた。
「写真を撮って良いですか?!」
やっぱり作者は答えない。
表情筋ひとつ、微動だにしない。
歩いて展示室に入ってくるところは見たので人形でもない。
私は困惑した。
もともと許可されていたものを、わざわざ口に出して尋ねてしまったばかりに、承諾の返事をもらわないと出来ないことに自ら変えてしまった。
もしかしたら、NOと言われるはずが無いと決めてかかっているのが見えすいた態度がイヤったらしく映ったのかもしれない……?
それ以上何もできないうちに目が覚めた。
(了)
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