召喚失敗勇者と追い込み
皆が夕食を食べ終えて再び私の部屋に集まった少し後に、ビューが戻ってきた。
「アカリ様戻りました」
「ビュー君遅かったね。それでどうだった?」
「……この件に関して伯爵は何もしないとの事です」
「……どういうこと?」
ビュー君は少し話しずらそうな感じだったけど、要点をまとめて報告してくれた。
その内容にパーラ君とハンナの二人は今すぐにでも伯爵に文句を言いに行きそうだったけど、流石に周りの子達が止めに入った。
さすがにパーラー君達が公爵家の人だといっても、相手伯爵家の当主なのだから問題になった場合色々面倒な事になるみたい。
これが子爵以下の身分だったらまた違うみたいなんだけどね。
「じゃあとりあえず、ビューのお兄さんの部下の人が情報を持ってくるまでは待機かな? 」
「そうですね。しかし、その協力者は信用できるのか?」
「恐らく問題ないと思われます。兄が直属にしているようでしたし、話した感じも問題なさそうでした」
「……なら良いんだが。しかしそうなると我々だけ情報を持っていても問題があるな。アイリス、魔導騎士団のベロニカにもおおよそその時間を伝えに行ってくれ。その協力者が持ってきた情報を元に作成を立てる必要があるし、こちらとしては戦力があまりないから向こうに協力してもらう必要があるからな」
パーラー君がそう言うとアイリスちゃんが魔導騎士団の人達の所へ伝達に部屋を出た。
「でだ……ビュー、お前はどうするつもりだ? 」
「どうするとはおかしなことを聞かれますね? 家族だろうが関係者であれば同様に断罪します。そのために法があるのですし、家族だからと言って減刑を願うつもりはありませんよ。兄からもその辺りは了承を得ていますし」
「それならいいが……大丈夫か?」
「問題ありません。今の私はアカリ様の従者ですので、家の事は全く別として考えています」
「そう言えばパーラー君、違法奴隷に関与していた場合ってどんな処罰が下るの?」
「そうですね、主犯やその組織の者達はすべて無期刑か処刑になるかと思います。そのほかにも違法奴隷と分かっていた購入した者はその状況によりますが、貴族であれば財産没収の上国外追放で平民なら奴隷落ちが多いでしょう。ただ、通常の奴隷として扱った場合ですがね」
通常じゃない扱いって……あんなことやこんな事とかの事なのかな。美少年奴隷と貴族美青年のとか……萌える!
そんな妄想していたせいで、少し顔が赤くしながらぶつぶつ小さな声で呟いていたら、パーラー君が何故かハンナに怒られているみたい。
ヴィン君とビュー君もジト目でパーラー君を見て非難しているみたいだけど、今の説明で何か問題があったのかしら?
「と、とりあえず、そんな感じです。まあ、初代国王様がある程度作成していた法律を情勢に合わせて色々つけ足したりはしていますが、そこまで変わってはいないですよ」
「初代国王様って元勇者だったんだよね? そうなると私と同じ日本から来ていた人なんだよね? 」
「そうですね。しかし六百年以上前の事ですので詳しくはわからないですね」
六百年以上前だと……日本だと鎌倉時代とかかな? そんな時代で今の法律を作ったとなると物凄い天才とかだったのかな? それともそれを補佐する人たちがかなり有能だったのか……どちらにしても、その当時に基礎の法律を作った人達は凄い人達ね。
色々とこの国の成り立ちに付いて話していると、扉をコンコン叩く音がしてビュー君が扉を開けると、そこには見慣れぬ男性が立っていた。
入り口でビュー君と少し話した後、入室許可を取ってきたので「どうぞ」と言って中に入ってもらう。
部屋に入ってきた男性は一瞬周囲を見渡した後、私の前で膝を付き礼をする。
「初めまして勇者様。私はこのガイの街の衛兵隊の隊長をしておりますラルスと申します。こちらに御座しますビューディン様の兄上で、シーレンベック家長男マルセロ様のご指示により勇者様のご助力させて頂く為に参上いたしました」
「あ、うん。あなたがビューの言っていた協力者ね――そんなに畏まらなくていいからね? 」
「しかし……」
「アカリ様がそう言っているのだから問題ないでしょう、楽になさい」
「かしこまり……わかりました」
アカリの言葉を聞いても流石にこの状況ではどうかと思ったのか一瞬言葉に詰まったが、ハンナが許可を出すと体からふっと力が抜けたように見えた。
「それで、どんな情報がえられたのかな? 」
「ご説明します。まずはゲルメルトがあの奴隷商の館に入ってくのは衛兵が確認しておりまして、その後屋敷から出ていないことが確認できております。そして、ゲルメルトは毎回この街にやってくるとあの館で最低でも一泊することが確認されておりますので、恐らく本日はそのまま出てこない物と思われます。それと――こちらがこの街の地図になりますが、館周辺には一つだけ不自然に何年も空き家になっている建物があります。そして、こちらが奴隷商が所有する店になります」
この街の配置としては、中心に領主の館があってその周辺には裕福な家庭の館が建ち並んでいる。奴隷商の館もこの付近にあり、問題となっている空き家は奴隷商の館から領主の館を挟んだ反対側で、更にその奥の街を囲っている外壁近くに奴隷商の店があるみたい。
「奴隷商の館と空き家、それに店までがほぼ一直線みたいね」
「そのようです。そして、これが私独自で調べた奴隷商の店で働く上役の家の位置なのですが……こことこちらになります」
ラルスが示したのは家を奴隷商や肩などを線で引くと、領主の館の敷地を避けるように少しいびつだけど四角く囲っているように見えた。
「これだと領主の館を避けて、上役の家を経由して空き家に行ってから店舗ってかんじなのかな? 」
「私も同意見です。初めは領主の館の地下に道を作っているのかと思ったのですが、流石にそんなだいそれたことはしないと思い調べなおしてみた所、このようなことがわかりました」
このラルスって人……かなり優秀なんじゃない? まあ、衛兵って言えば元の世界の警察みたいなものだだし、その隊長なんだから元の世界なら警部? とか言われる人なのかもしれないわね。まあ私は警察の階級とかよくわからないから何とも言えないけど、ドラマとかでは警部とか警部補ってそんなイメージなのよね。
それはさておき、そうなると目標となる建物は奴隷商の館、上役の家の二か所と空き家、それに奴隷商の店の計五か所かな。
五か所全てを一緒に襲撃するのは難しいし、館から出ていないとはいえ既に地下から逃走されていると言う事だと問題がありそうね。
それに、そもそも本当に地下通路があるか確認もしないといけないから、調査しつつ攻めるのが一番良いかしら?
とりあえずは、その五ケ所全て監視をしないと行けないから、人数的にも魔導騎士団の人の手を借りないとむずかしいかな?
そんなことを考えていると扉をノックした後、アイリスちゃんが戻ってきて一緒にベロニカさんも来てもらえたみたい。
さあ、みんなでかんがえよー!
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