召喚失敗勇者とマッドマジシャン

 辺りを見渡すと、期待したキラキラした目で見つめる魔導騎士団員の人達がいるから、何か見せてあげないといけないとは思うんだけど。


「バルヒェットさん、ある程度強そうな魔法をみせてあげられるとは思うんですけど、そうなると周で見ている人たちに被害が起きそうなんですけど」


「ああ、それでしたら問題ありません。通路との間には結界が張ってありますから、ある程度の余波はそれで抑えられます。ただ、アカリ様クラスの魔法に耐えられるかは何とも言えませんが……」


「そうなんですか? それじゃあ、ある程度強い魔法でも大丈夫そうですね! うーん、どの魔法にしようかな?バルヒェットさんはどんな魔法が良いですか? 」


 今の私であれば、この世界に存在するほぼすべての魔法が使えてしまうから、どんな魔法がみんなから良く見えるかわからないのよね。

 それに、ありきたりな魔法だとがっかりさせてしまいそうだし。


「そうですね……それでは、勇者様の魔法の中でも基本属性ではない魔法などいかがですか?」 


 ふむふむ、基本属性のじゃない魔法ね。

 火水風土無が基本属性で、他の魔法の氷や光などは基本的に派生魔法か複合魔法魔法と言われているみたい。肉体強化と回復魔法とかは別枠の身体操作魔法って言われていて、肉体強化魔法は戦士系の人でもオド操作が出来る人なら使用する人はいるんだけど、回復魔法はオドとマナの双方の操作が出来ないと難しいと言われていて、普通の魔法とも違うから回復特化の人か高位の魔導士しか使える人が居ないみたい……私は全部使えるんだけどね。


 基本属性以外の魔法だと、氷結とか閃光みたいな魔法が派手で良いと思うんだけど、色々被害が出そうな気がしちゃうんだよね。


「うーん。決めた! みんな、今から魔法使うから下がっててもらっても良いですか? 」


 そう言ってバルヒェットさん達に下がってもらった――なんか、コジーラさんがの目が少し気になったけど……たぶんあれは、かなり期待しているみたいね。


「それでは行きますよ! 皆さん、何かあったら防御してくださいね! ――『超越爆裂トラセンドエクスプロージョン』」


 私が発動した魔法は、無属性と火属性そして風属性の複合魔法で、無属性は魔力をそのまま衝撃を出す魔法で、そこに火属性の魔法で高温を発生させ風魔法で範囲の調整と収束をさせる。

 簡単に言うとそんな感じなんだけど、これが結構制御するのが面倒なんだけど見た目は派手だし、普通の人だとまず制御出来なくて勇者っぽい魔法だから選んでみのよ。


 そして、私が放った超越爆裂トラセンドエクスプロージョンは黒い球体の様な物になって飛んで行き、目標の人形に接触すると――凄まじいい音と衝撃が辺りを襲い、見学していた人たちから悲鳴や歓声が上がった。


 人形に接触した魔法は、まず無属性魔法の衝撃で破裂と火属性魔法の高温が合わさり、一瞬で人形を木っ端みじんに吹き飛ばし、風魔法でその範囲を三メートルくらいにしたからその範囲内の土などもその衝撃で、凄いスピードで辺りに吹き飛んで行く。


 バルヒェットさんが言っていた結界に、いくつもの破片が当たってビシビシ音がしていたけど、破片はすべて結界に阻まれて見学者には被害はなかったみたいで一安心。

 

「こんな感じでどうですか? 」


「さ、流石はアカリ様……素晴らしいです」


 バルヒェットさん達は驚いてくれたようで何より。

 ハンナ達も私が使った魔法を称賛してくれて、借り物の力と言う事はわかっているんだけど、それでも素直に誉めて貰えてうれしかった。

 ハンナ達に囲まれている私に向かい向かってくる人が一人いた……敵意とかは感じなかったので無視していたら、私を囲んでいる輪に割り込んでいきなり手を握り叫びだした。


「すすすす素晴らしい!!! アカリ様、先程の魔法はどのような魔法なのでしょうか?魔法名から察するに勇者魔法ではなく超越魔法のようですが、何種類ほどの魔法の複合魔法なんですか! 興味深い、ひじょーーに興味深いです! もしよろしければ別室でご教授頂きたく思います!」


「ひぃいいいい! な、なになになに! 」


「コジーラ副騎士団長アカリ様から離れろ! 」


「嫌です! 先程の魔法を教えて頂けるまで放しませんぞ! それに、他にもまだ勇者様の魔法が使えるのであれば、それも教えてほしいです! 」


「わかった! 教える、教えるから離して!」


「わかりました!それで一体どんな――ぐほぅ!」


「少しは弁えろ。不埒者を止めることが出来ず申し訳ありませんアカリ様。――ハンナこれを」


 いきなり襲って来るような勢いで私の手を取り、魔法が教えて欲しいと叫びまくったコジーラ副騎士団長は、パーラー君に一撃を入れられて今は蹲っている。


 今は、ハンナが私を隠すように抱きしめながら、パーラー君が渡したハンカチで私の顔を拭ってくれる。

 私は突然な事で体が硬直して手を振り払う事が出来ず、必死に魔法を教えて欲しいと迫ってくるコジーラさんが怖くて、いつの間にか泣いてしまっていたらしい。


「アカリ様大丈夫ですか? あのバカ者には後でしっかりと罰を与えておきますので」


「ハ、ハンナ。ありがとう、もう大丈夫。その、罰って何をする気なの? 」


「そうですね。私自身では騎士爵であるコジーラを罰することはできませんので、父上から奏上してもらい国王様から何か適切な罰を――良くて爵位剥奪の上国外追放、最悪自裁になるでしょう」


「ダメダメ! 流石にそれはやり過ぎ! と、とりあえず、何であんなことをしたのか理由をまず聞きましょう!」


 流石王国制の異世界、あの程度――完全にセクハラなんだけど――で自裁があり得るって怖いんですけど。

 ハンナも実家が公爵家だから、本気でやろうとしたらその辺りの事が簡単に出来てしまうというのが怖いわ……ハンナは私の意見を一応聞いてくれたみたいだから良いけど、他の皆貴族だからその辺の所は注意しておかないと。


 ハンナは、抱きしめていた私を解放した後、パーラー君達三人とバルヒェットさんが烈火のごとく責め立て、そのまま説教を始めてしまった……んだけど、流石にこの場所では周囲の視線もあるので移動することになった。



 移動先はバルヒェットさんの執務室になっている魔導騎士団長室で、そこであれば外に会話が漏れる事も無いとの事でそこになった。


 移動中は、パーラー君を先頭に横にハンナとリリアン、後ろにはヴィン君とビュー君が私の周りをガードするように堅苦しく移動をした。


 

 因みに、移動中はハンナよりもリリアンの方が私の心配をして、色々話しかけて来てくれた……相変わらず見た目は悪役令嬢みたいなのに、中身は凄く優しい子なんだよね。


 そして、問題のコージラ副騎士団長は、他の騎士団員に連行されるように連れて行かれていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る