失敗勇者と晩餐会
楽しいお風呂タイムが終了して部屋に戻ると、ソファーでぐでーってなる時間がないほど急ぎで着替えをすることに。
――予想以上にお風呂に時間が掛かってしまったみたいで、男性従者のみんなが戻ってきた私たちを急かしていた……仕方ないじゃん、女の子はみんなお風呂がながいものだって。
男性陣が全員外に出た後、私はカーテンで仕切られた着替えスペースでドレスに着替えされられた……みんなに、あれが良いいこれが良いと着せ替え人形扱いされたのは、これが初めてだったんだけど……想像以上にめんどくさい。
それに何このコルセットって、漫画とかアニメでは見たことはあったけど――想像以上に着るのが苦しい。
流石に付けるときに苦しくて少し力を入れちゃったんだけど、そうしたら締めようとしていた紐が切れちゃって、クロエとアイリスちゃんが後ろに倒れて居ちゃったんだよね……二人掛かりで全力で締めるんだもん仕方ないじゃない。
そんなこともありつつも、何とか衣装を着替え終わった時にはみんな汗だくで、これから髪を整えるのが大変だとおもっていたら、魔法! そう、魔法でドライヤーみたいな冷風と温風を出して髪を乾かしてくれたの!
私も魔法は使えるはずなんだけど、まだ一度も使ったことが無かったからクロエが使った時興奮して手を握ってぴょんぴょん跳ねたら、時間が無いからおとなしくしてくださいっておこられちゃった――てへ!
その後、側仕えの子達の髪をみんなで整えていたんだけど――
「クラウディア。あなたの髪凄くサラサラになっているわ! 」
「え! そうなの! やっぱりアカリ様のしゃんぷーとかのおかげかしら!って、あなたのも凄くサラサラよ! 」
みんなでお互いの髪を整えていたら、シャンプーのおかげでみんな髪が今までよりかなり良くなったみたい!
「あなた達――わかっているわね! 」
「「「はい! 絶対にこの事は漏らしません! 」」」
うんうん、みんなが仲良くなることは良い事ね……でも、流石に問題にされるような相手には話していいからね。
全員の身だしなみを整えた後、ハンナさんを先頭に晩餐会の会場へと早足で向かった。
無駄に長い廊下を歩きいくつか廊下を曲がると、そこが晩餐会の会場なのか入り口にかなり装飾がゴテゴテ付いた鎧を着た人が二人立っていて、ハンナさんが話すと入り口を開けてくれると――そこには豪華と言う一言で表せられそうな程の煌びやかな大きなホールだった。
たぶん貴族の人達だと思うんだけど、みんな色とりどりの豪華な服を着て思い思いに会話を楽しんでいるように見える。
それにこの装飾! 天井に吊り下げられているシャンデリアは、下から見上げてもかなり大きくて実際の大きさはわからないくらい大きいし、光っているのはろうそくの様な物じゃないみたいで、シャンデリアそのものが光り輝いているように見えてとても綺麗。
「勇者。アカリ=シクラ様ご入場です! 」
ハンナさんが話していた人が大きな声で私の名前を呼んで、中に居た人たちに私が来たことを知らせ、静まり返り会場中の視線が入り口に立つ私に一斉に集まる。
ええー! 何これ! こんな事聞いていない! ちょっと、みんなこっち見ないでおご飯食べたり歓談していてよ!
「アカリ様。そのままお進みいただき国王様の元までゆっくり歩いて行ってくださいませ」
どうすりゃいいのとハンナさんに聞こうとして顔を向けようとした時に、後ろからクラウディアさんが小さく呟いた。
むむむむむ――しかない、女は度胸! この程度学芸会で退場のタイミングを間違えて一人残った時の事を思えば恥ずかしくない!
そう自分に言い聞かせ、真っ赤な絨毯の上をゆっくりと歩いていく。
……相変わらずそこかしこから無遠慮な視線を感じるけど、歩き始めてしまえばそれ程気にならなかった。
「……あれが……しい」
「まあ。なんて……かしら」
何かをささやき合うような声が聞こえてくるけど、そこかしこでそういったぼそぼそと話す声が聞こえてきて内容まではわからないけど、あまりいい気分でわないわね……まあ、こんな小娘でも勇者だから仕方なく歓迎しているのだろうから、貴族の人達少しかわいそうね。
正面には、国王様とたぶん他は王妃様や王族の人達の様な人達が、横一列に並んで私の到着を待っていた。
因みに私の後ろには、側仕えのみんなが並んでついて来てくれている――さっきまで他人だったのに一緒にお風呂に入って騒いだりしたおかげで、みんながついて来てくれてちょっと心強いきがすした。
国王様から少し離れた所で立ち止まると、後ろの側仕えの子達が座るような気配がして私もした方が良いのかと動こうとしたら「アカリ様はそのままで」とハンナさんが小声で教えてくれ。
「よくぞ参られた勇者シクラ様。此度は勇者様の歓迎の宴をですので、ごゆるりとご堪能下さい」
「ありがとうございます。楽しませてもらいますね」
国王様の近くまで歩いていくと、そう話しかけてきたので社交辞令で返すと、国王様は小さく頷いた後手を上げると――突然大きなラッパの様な音が聞こえてから楽器の演奏が始まった――なにか聞いた事があるような曲調? クラシックかな?
それっぽい音楽が流れると、国王様達は私の前から立ち去り他の人達と話しに行っちゃったみたい。
「はぁ――緊張した! みんなおしえてくれてもよかったじゃない! 」
「申し訳ござません。アカリ様であれば存じている物と……」
いやいやハンナさん、私は只の一市民でそれも社会人経験もない女子高生ですよ? こんな経験した事も無ければ、難しい礼儀作法なんかも知らないんだから教えてよね!
ちょっとぷりぷり怒ったふりすると、みんな平謝りするから逆に何か悪い事したみたいになっちゃった。
「もういいから、次からはちゃんと教えてね。それで――私はこれからどうしたら良いの? 」
「こういった晩餐会ですと、この後色々の方から挨拶されに来ると思います。その間私たちが全員付いていますと周りの人達に迷惑になりますし、アカリ様とお話ししずらいと思いますのでリリアンとアイリスを側に残していきますので、リリアンがどのような方が来られたかお教えいたしますので、それに合わせて適当にお話しいただければと思います。アイリスはアカリ様の護衛を」
そう言ってハンナさん達は人混みに消えていくと――来るわ来るわ、無駄に偉そうな人達がわらわらと……
その後、大臣から始まり公爵や侯爵など、様々な人が家族単位で押し寄せ何故か家の自慢や息子の自慢をして帰って行く……なにがしたいのかしらね?
リリアンが私に挨拶したい人達の順番を見極め、どんな位の人なのかとか説明してくれたり、あまりにも息子をを進めてこようとする人には人睨みすると、その人たちは直ぐに帰って行く……流石悪役令嬢顔――本当に悪役令嬢じゃないわよね?
アイリスは、私に飲み物を持ってきてくれたりつまんで食べられる様な物を盛ったお皿を持ってきてくれたりして、雑用の様な仕事をしていたけどずっと笑顔でその仕事をしていた。
そして、さっきいなくなったハンナさん達だけど――家族の人達と一緒に挨拶に着ていた。
なるほどね、家族を紹介するときに彼女たちが居たほうが話しやすいし、向こうもあまり変な事を言ってくることは無かったから、そのブレーキ役としてみんな家族の元に戻って行っていたのかもしれないわね。
……それに、私の側仕えの人達の家族だから、他の人達とは違って楽しく会話をすることが出来た気がする。
……ただね、始めは気のせいかと思ったんだけど――立場が上に人になればなるほどアイリスちゃんに対して、一瞬嫌な視線を送る人が多いのよね。
まあそれは、側仕え子達の中でも多少はそんな気がしていたけど、アイリスちゃんは何かあるみたいね……そう思っていた矢先に事件は起こった。
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