召喚失敗勇者と説明会
そして召喚され、目の前には国王と名乗る豪華な服を着た渋いおじさんにセクメトリーと話した内容を大雑把に説明した。
「そうであるか。して、勇者殿のお名前をお聞きしてもよろしいかな?」
「はい! 私は志倉明莉15歳の高校一年生です。セクメトリー様に呼ばれて、この世界の魔王を倒しに来ました!」
私が軽く自己紹介をすると、周囲を取り囲んでいる大勢の人たちから「おお! 彼女こそ女神なのでは無いか!?」とか「なんて凛々しいんだ!」「いや、可憐で美しい」など私を絶賛する声が聞こえた。
いやまあ、それほどでもあるんだけどね!って冗談はさておき、私はただの普通の女子高生でモデルとかアイドルをやっているこのように美人だったり可愛かったりするわけじゃ無いから、おだてているだけなんだろうね……悪い気はしないけどさ。
でも、国王と名乗った人の後ろにいる、多分王妃様や王女様なんだろうけど、その人達の方がどう考えても美人なんですが。
それに、周りを取り囲んでいる豪華な服を――と言っても王様達ほどでは無いが――着ている人達の中にいる女性達も、みんな海外映画の主演女優並みに整った顔立ちの人ばかりで――あ、少しは日本人っぽい顔立ちの人もいるのね。
でも、その人達も美人ハーフのような顔立ちだからどう考えても私が可愛いとか言うのは間違ってるわね。
「シクラが家名でアカリが名で合っておるかな?」
「そうですよ。アカリ=シクラって名乗った方がわかりやすいですか?」
「そうなりますな。シクラ殿とお呼びしてもよろしいかな」
「あ、大丈夫ですよ」
あちゃー、周りの人を気にして王様と会話中だったの忘れて周りを見渡しちゃってたよ。
でも、王様も私の様子を見ながら話してくれてるみたいだから、気を使ってくれてるみたいだし大丈夫かな?
「ではシクラ殿、ここような場で立ち話をするのは勇者様に対して失礼であるから、場所を移したいと思うがよろしいかな?」
「大丈夫ですよ」
「それでは参りましょう――こちらへ」
王様はそう言って私を隣に並ばせて、堂々とした歩きで、人達が避けたてできた道を歩いてゆく。
かなりむず痒くなりそうな、視線を多方向から受けているが、なぜか思ったより動揺することは無かったんだけど……え、何、勇者ってだけでこんなに歓迎してもらえるの? ちょっとやばくない?
一応手を振り愛想を振りまきながら王様と一緒に歩いていたけど、どこかのアイドルコンサートみたいに「今俺と目があったぞ!」「いいや、今のは俺を見ていたんだ!」「邪魔だ!アカリ様のご尊顔が見えないじゃないか!」など大変な事になっていたので愛想笑いを浮かべながら心の中では少し呆れていた。
国王様と一緒に廊下を歩いていると、正面に執事やメイドさんみたいな集団が待ち構えており、近づいていくと扉を開き、全員で綺麗に揃ったお辞儀をして出迎えてくれた。
「なにこれ、すっっっっっっごい部屋! 」
案内されてはいった部屋はとても贅を凝らされた部屋だったのだが、成金趣味の様なゴテゴテした感じではなく一定の調和がなされ上品にまとめられていたのだ。
部屋に入ってまず見えるのは、天井近くまである巨大な窓ガラスから見える王城と街、そして遠方に見えるのは穀倉地帯と緑あふれる山々だ。
床にはワインレッドの様な色をした絨毯に落ち着いた白みがかった黄色で模様が描かれ、壁にはクリーム色っぽい落ち着いた色をしており所々に細やかな矢郁が施され、壁の所々に風景画や誰かの肖像画などが掛けられている。
天井に見えるのは大きさはそこまで大きくないが、シャンデリアの様な物が釣り下がり部屋をキラキラと照らしている。
そして、部屋の中央にはこれまた高級そうなソファーセットが置かれていた。
アカリは高級そうな部屋に少し腰が引けてはいたが、物珍しさからキョロキョロよ部屋を見渡した。
「勇者様、こちらへおかけください」
いつの間に居たのか、壮年の執事がアカリを案内する。
ソファーは三脚置いてあり、一人で座る用の大きく余裕を盛ったソファーが二つと、三人掛けくらいのサイズのソファーが一脚あり、アカリは奥にある一人掛けのソファーの一つに案内された。
因みに、案内されたソファーは柔らかすぎて一瞬腰を浮かしてしまいそうになる程の柔らかさだった。
アカリが席に座ると対面の椅子には王と王妃様と思われる女性が二人腰を掛け、後ろには髭を蓄えた恰幅の良い男性と少し陰気そうな雰囲気のがりがりの男性、そしていわゆる聖職者っぽい服装の少し嫌な目つきをしたかなりおなかの出ている男性が立っていた。
「失礼いたします」
メイドさんが私の目に紅茶? と思われるものを置いてくれたので会釈するとにこやかな笑顔を返してくれた。
私と同年代か少し上だろうけど、動きの所作にも品があり何より美人なのになんでこんな所で給仕みたいな仕事をしているのか不思議だ。
それに、後ろに控えているメイドさんや若い執事の人達も美形ばかりで、わざわざそういった人を集めて執事やメイドをさせているのかな?
まあ、王宮勤めとなれば給金もいいだろうし、言っちゃ悪いけど不細工に囲まれるより美形に囲まれた方が気分がいいのは確かだしね。
メイドさんが国王様達に飲み物を出し終え、後ろの人達の所まで下がると王様がようやく話し始める。
「改めて、ようこそお越しくださいました勇者アカリ殿。世の隣にいるのは第一王妃のフィリーネと第二王妃ヴィクトーリアになります。そしてこちらから――」
「はっ! 私は騎士団長をしておりますヴァレンシュタインと申します」
「……私は魔導騎士団団長バルヒェットと言います」
王妃様達は私に敬意を払っているのか、結構深くお辞儀をしてくれた。
そして、騎士団長のヴァ……ヴァレ何とかさんがとても大きな声で自己紹介をして、バル何とかさんが少し嫌そうな顔をしてたけど仲が良くないのかもしれない。
「初めまして勇者アカリ様! 私は勇者様を召喚なされたセクメトリー様を信仰するウトサ大聖堂の司祭をしておりますゲルメヌトと申します。以後お見知りおきを」
そして最後に、とても聖職者には見えない恰幅の良いゲリヌメヌメ……じゃななくてゲルヌメヌメト? と言う人が自己紹介をしてきた。
私の中で三人を、うるさい騎士団長と根暗魔導騎士団長とゲル聖職者と呼ぶことにした。
「アカリ殿はセクメトリー様よりある程度お話を伺っていると思われますが、確認の為ご説明させていただきます」
一応国王様が今のこの世界の現状、そして神々の加護により勇者を召喚して魔王の討伐をして欲しいと……長々と壮大に語ってくれた――一応真面目に聞いてあげようとしていたのだが、途中から相づちを打ちながら適当に聞き流した――だって、一時間位ずっと話していれば飽きもするっての!
「そして、初代勇者様が建国されたのがこのイオリゲン王国で、我々王族は勇者様達と同じ血がながれているわけです」
「そうなんですね! そうなるの私と王族の人達は過去を正せば同じ日本人と言う訳ですね! 」
「そうなりますな。そして本日はこの後アカリ殿のお泊りになる部屋でお寛ぎいただき、その後歓迎の晩餐会を開かせて頂きます。明日以降で一度アカリ様のお力の確認もさせて頂きたく、また日時がお決まりになりましたらご連絡いたしますが、その際にこの両騎士団長がアカリ様のお相手をさせて頂きます。また、大聖堂の中に入られる場合は、ゲルメヌトがアカリ様をご案内するとの事ですので、そば仕えの者にお伝えいただければと思います」
「わかりました! あ、でも私晩餐会の様な所に着ていく服とか持っていないんですけど――」
「その辺りもアカリ様の側仕えに言っていただければご用意いたしますし、アカリ様が必要な物はすべてこちらでご用意させて頂きますのでご安心を。もし何か困ったことがあれば側仕えの者か――このシュナイダーに申し付け下さい」
話が長い! とは思っても実際に口に出すことは出来ないのが悲しい所だけど、何から何まで国が面倒を見てくれるみたいなので、とりあえずの衣食住は問題なく確保できるみたいでよかった……そうだ、これだけは確認しておきたい!
「あの、王様一つだけお聞きしたいのですけど……」
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