召喚失敗勇者と神々達
セミの鳴き声が窓の外から騒がしく聞こえてくる夏空の下……ではなくエアコンの聞いた室内で私は友人との待ち合わせの為に準備をしていた。
隣室からは下の兄がバイトから帰って来たのか、勢いよく扉が閉まる音が聞こえエアコンが騒がしく起動するような振動が聞こえた来た。
「もう少しああいった行動をどうにかしたら彼女も出来そうなのに……っていけない!急がないと間に合わなくなっちゃう!」
下の兄は少し大雑把と言うか雑で、もう少し上の兄のようにしっかりしてほしいと思わなくもないが、いまはそんなことを気にしている時間は……と思っていると形態からSNSの着信音が鳴り、カバンにしまった携帯をとりだす。
「もしかしてもう着いたのかな……え?なにこれ?いたずら?」
形態を覗き込むとその画面には『あなたも召喚されました』とポップアップ表示が出ていた。
「何かの広告かな? 切っちゃえ!って、あ 」
いつも通り表示を消すためにスライドして普段であれば表示か消去と出るはずなのだが、その表示には何故かOKとしか出ておらず普段通り手が動きその表示を押してしまった。
「あっちゃー。変なサイトにとばされたりしないよね?え、きゃーーーーーーー! 」
するとスマホの画面には『ようこそ我々の世界へ』と表示され画面が激しく輝きだし、視界は白一面にになっていた。
「ここは?」
光が収まり再び目を開けると、何処を見渡しても真っ白な非現実的な光景が視界に飛び込んでくる。
「え、なに!? ここどこなの! お母さん!お父さん!お兄ちゃんたち!」
しかしその声に反応したのは明莉が呼んだ人たちではなく、全く聞き覚えのない女性の声だった。
「始めまして志倉明莉さん。私はこの世界を収める神の一人のセクメトリーと言います。今は少し混乱されていると思いますが、どうか私の話を聞いてください」
背後から声を掛けられビクッと体を震わせながらその声がした方に視線向けると、女性の形をした光の塊のような物が居た。
「あなたをこの世界に呼んだのは、この世界が滅亡の危機に瀕しているからです」
そのセクメトリーと名乗った光は、今私が居る所が神様が作り出した異界で、私に世界を救ってほしいと言っている所とは少し違う所らしい。
そして、男性誌の漫画であるような魔王と言われる悪魔の王がもうすぐ復活して世界が滅茶苦茶にされてしまうから救ってほしいんだとか。
そんなこと言われても私の家族はごく一般的な家系で、特に特出した経歴を持つ一族でも特に裕福と言う訳でもなく、私自身にも特別な力は持っているわけでもないのにそんなことは出来ないと言うと、神様の力の一部を貸してもらえるらしくその力を使って魔王を倒してほしいと言われた。
「神様の力の一部で魔王が倒せるなら神様が魔王を倒したらいいんじゃないですか」
「我々神々は下界の事に直接手出しすることを禁じられているのです。そのために、あなたの様な異世界の勇者足り得る者達を召喚して過去何度も魔王を討伐しているのです」
神様が力を与えて魔王を討伐しているのであれば、下界に干渉している事と同意義の気もするのだけど……という疑問があったけど、たぶん直接ではなく間接だからいいとか言われそうなのでやめておいた。
「じゃあ、その神様の力があれば私一人でも魔王は倒せるって事で良いの? 」
私の問いに光が少し揺らめくような感じがしたが、気のせいだったのか意味が無かったのか直ぐに揺らめきは収まった。
「……本来であれば勇者は二人召喚されるはずでした。あなたの兄の志倉十誠さんが。しかし、何かしらの干渉があったのかあなたしか召喚することが出来なかったのです。でも心配なさらないでください、あなたの兄に渡す予定だった力をあなたにも渡しますので二倍の勇者の力があれば魔王なんて簡単に倒せてしまうと思いますよ」
この神様大丈夫なのかと一瞬不安がよぎり、もう一人召喚される予定だったのが下の兄よ言う事にも驚いたが簡単に魔王が倒せると言ってしまう所が一番驚いた。
「じゃあ神様、何でいつも一人じゃなくて二人なの? 一人で二人分渡せば簡単に魔王がたおせるんでしょ? 」
「ええ、その質問理解しています。しかし、最初期に勇者を召喚した頃の私は力が今程なく、一人に今ほどの力を分け与えることが出来ず一人では倒すのが難しいと思い、二人に分けて力を与え協力して倒して貰っていたのです。しかし、それが伝説となり勇者は二人召喚されると下界で話が広まってしまったので、しかたなく今でも二人の勇者を召喚しているのです」
うーん。分からなくも無いけど、どこかで一人にしてしまった方が楽だったのではないかとはおもうけど、そんなこと聞いてもしかたがないかな。
「どのみち魔王を倒さないといけないのであれば倒すけど、もし私が殺されたりした場合はどうするのよ。それに、わざわざこんな世界に連れて来られて苦労して魔王倒しても、元の世界にただ戻されるだけなんて何か損したきがするんですけど! 」
「あなたがもしこの世界で死んでしまった場合、あなたはそのまま元の世界に帰るだけになります。ええ、もちろんこちらの世界で死んだことは無かったことになりますので安心して下さい。そして、あなたが魔王を討伐したあかつきには、元の世界に戻る際に願いを叶えて差し上げます」
「え!どんな願いでも? 」
「そ、そうですね。あなた方の世界の神々に怒られない程度の事であれば……どんな願いでも……です」
「はいはーい! それじゃあ、イケメンでお金持ちで優しい彼氏が出来てその人と結婚して幸せな一生を送るとかもできるんですか! 」
「……その程度の願いで良いのですか? それであれば向こうの神々にお願いしたら問題なく叶えて差し上げられますよ」
「よっしゃい! 」
ふふふ、この世界魔王を倒せばイケメンのパーフェクト彼氏が出来て、しかも幸せな一生を送れるとか完全な未来設計が手に入る!
今まで通り普通に暮らしていたらそんな人にである確率何て皆無だし、そんなバラ色の未来が待っているのに行かないのはありえないよね!
「わかりました! サクッと魔王討伐してきますね! 私のバラ色の未来の為に! 」
「……」
あ、なんだろう、光が何か不規則に揺らめいている……何となくだけど呆れられてる気がするけど仕方ないでしょ。
「じゃ、じゃあ、さっさと魔王を倒してくるから神様力を頂戴! 」
「え、えっと。まだ魔王は復活していないのでしばらく修行したり、魔王の配下である悪魔を倒したりして実力を上げてから魔王を倒しに行ってくださいね……お願いですから」
「そうなの? じゃあじゃあ、とりあえず私は何をしたらいいのよ」
「あ、あなたが召喚されたときに周りに人が大勢いると思いますので、そこの一番偉い人に話をしてとりあえずは修業をして仲間を集めて旅をするのが良いと思いますよ」
そっか、神様は私に力は貸してくれるけど、戦い方や装備とかは無いからそこはその人たちに頼めって事かな。
うん、少しワクワクしてきた。それに仲間かー、イケメンばかりのパーティを組んでお姫様の様な扱いをしてもらってもいいかもしれないけど、でも実力が無くて死なれても困るし……その辺りも向こうに着いたらそうだんしたらいっか。
「じゃあ神様、ちゃっちゃと言ってちゃっちゃと魔王倒してくるから、報酬の件よろしくね! 」
「あかりさん待ってください。他にもお伝えしないといけないことが」
私がさっさと魔王討伐に行きたいと言うと、神様は私を引き留めこの世界について色々説明してくれた……んだけど
この世界は完全にファンタジーの世界で、簡単に言うと剣や魔法の何でもありな感じの世界で、人間以外の種族もいっぱいいてみんな仲良く暮らしているんだって。
それと、他に六人も神様がいるからその神様達に合いに行くのは構わないけど、粗相のないようにだけは特に注意されてしまった。
他にも色々と元の世界との違いを教えてもらい、この世界での常識などすべて聞き終えたのは一時間くらい時間がたってからだった。
……途中から面倒になって適当に相づちを打っていたけど、魔王を倒せば全てOKだからあまり頭に残っていなかったりもする。
「……とまあ、こんな感じです。……直ぐにむかいますか? 」
「はい! いつでも送ってもらって大丈夫です! 」
「……少し心配な所もありますが、まあダイジョブでしょう。それでは、あなたが魔王を倒し再び会えることを楽しみにしていますね」
神様がそう言うと、私の周りに魔法陣の様な物が現れたと思ったら、物凄い勢いで景色が流れて行き神様は直ぐに見えなくなった。
魔法陣が消えて私が再び足を下ろしたのは……豪華な飾りを施された神社だった。
「え?こんなところからスタート? でも、周りは真っ白のままよね??? 」
周囲を見渡しても、正面の建物以外さっきの場所と変わったように見えない真っ白な空間のままだった。
不思議に思い周囲を見渡していると、神社の道沿いに急に火がともされこっちに来いと言っているような気がしたので、真っ赤な大きな門をくぐって神社の中へと入って行く。
しばらく歩くと大きな本殿の様な物が見えてきて、急に扉が開き誘っているような感じだったのでその中に入ると、そこにはさっきの神様より強い光の塊がいたんだけど、今度は女性じゃなくて男性の神様みたい……しかもかなり昔のなんだっけ? 頭の両側に髪を結んだ髪型……をした神様がいた。
「日ノ本の国より来たれし勇者よ、よくぞ参られた。私はこの世界の主神であるタケミカヅチだ。そなたに頼みたいことがある」
タケミカヅチってどこかで聞いた事がある気がするんだけど……だれだっけ? 日ノ本の国って日本の昔の呼び方だし、日本の神様だった気もするんだけどどんな神様なのかよくわんないわ。
でもわざわざ呼び寄せたって事は何か理由があるのよね。
「頼みたい事ってなんですか? 」
とりあえず、話だけでも聞いておかないと……日本の神様だしね。
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