第62話涼香のメイドさんは可愛すぎる!!!
したい事がイマイチ見つからず不安になってしまった俺。
涼香が胸を貸してくれ、もの凄く気分が落ち着いたので胸元から離れていく。
「弱音を吐いて悪かった」
「むしろ、遅すぎだっつうの。サッカーを辞めた時に泣いとけばマシだったんじゃない?」
「あ~、それもあるか」
サッカーを諦めた時、涙を流すまいと必死に堪えた。
踏ん切りを泣かない事で曖昧にしてしまった。
結果、いつまで経っても未練を消し切れない理由でもあったんだろうな。
「素直じゃないもんね」
「まあな。さてと、掃除の続きをするか……」
「ねえ、祐樹。好きなものが見つかったら教えてよ?」
「ぼちぼち、お前以外に好きなものを見つけなきゃ……やっぱり人生つまらないもんな。気長に探してみる」
「そうそう。私達、結婚はしてるけど、まだ18歳だもん。ゆっくりで良いんだよ」
「だな」
したい事は見つからない。
周りはしたい事を持っている人ばかりじゃ無くて、俺みたいにしたい事を見つけられず、だらだらと時間を浪費している者はたくさん居る。
誰にだって、そう言うときはある。
最近でこそ、涼香は写真と言うものに夢中だが、前までは今の俺みたいだったんだから。
女子高生っぽく、友達と笑って遊んで騒いで、夢? あ~、取り敢えず勉強しとけば何とかなるっしょ! って感じで。
今の俺は何かできるほどの余裕があるせいで、何かしたい事を探さなければと気持ちが先行しすぎているだけだ。
実際はなんて事の無い『贅沢な悩み』
涼香の胸元で愚痴をこぼしたこともあり、もの凄く気分は晴れやかだ。
そして、
「祐樹?」
「ありがとな。お前と結婚出来て良かった」
涼香との結婚が間違いじゃない。
それを強く実感した。
ちょっとした些細な悩みを真剣に聞いてくれ、胸を貸してくれる。
最高のパートナーだ。
「あはは、私ほど優しいお嫁さんはいないよ? という訳で、もし私が悩んでたり、辛そうにしてたりしてたら逆に助けてくれなきゃ泣いちゃうからね?」
「それもそうだな。どんな些細なことでも付き合ってやる」
軽い気持ちでそんなことを言った途端。
なんと言うか、涼香が可愛げに俺に対しての不満を漏らしてきた。
「今、熊沢さんとはどうなの?」
熊沢さんとはとある講義で出会い、食べ歩きサークルを通じて仲良くなった。
女性の友達だ。
涼香と俺は大学内ではアウトドアサークル以外では基本は干渉しない。
互いに互いの学生生活を謳歌するために。
よって、口出しは厳禁。
が、しかし、やっぱり気になっていたらしい。
「出会えば軽く話し、サークルでは一緒に行動するくらいだからな」
「なら良し」
「そりゃまあ、お前一筋だし」
「ふふっ。そう言われると照れちゃう。でもさ、祐樹は気を付けた方が良いよ?」
「何がだ?」
「女子にモテやすいタイプだから」
「ん? 生まれてこの方、告白なんてされたこと無かったが?」
「……怒らない?」
やや上目づかいで俺の様子を伺う涼香。
なにやら後ろめたい事があるのは間違いがない。
じゃ無ければ、怒らない? なんて聞かないはずだ。
「良いぞ。怒らないから話せ」
「祐樹がサッカー部だった時、なんかモテてたのがムカついたから、周りに祐樹の恥ずかしエピソードをばらしちゃった。……てへ?」
明かされた衝撃的な事実。
ああ、そうか。
だから、ときたま一部の女子からなんか冷たい目で見られることがあったのか。
「って、おい!」
「ごめんごめん。ちなみにどんなのをバラしちゃったか聞く?」
「聞かせろ」
「祐樹が小学校1年生の時、おつかいを頼まれたけど、出来なくて帰ってきちゃった事があったってね」
「つまり、俺の青春はお前に邪魔をされてたとでも言うのか?」
「ばっちり邪魔してた。前にも言ったじゃん。サッカーや運動をしてる時の祐樹はかっこ良いんだもん。一部の女子の中では中々に受けが良かった。が、しかし、なんかそれが気に食わない私が色々と言いふらしてたからね……」
「ほんとお前は何してくれてんだ? 俺の青春を返せ」
「ごめんごめん。でもさ、祐樹? 私も話したんだからね?」
「な、なにがだ?」
「惚けるんだ。へー、惚けるんだ」
完璧に分かられている。
やけににっこりした顔で俺から視線を外さない涼香。
そう何を隠そう。
「俺も、涼香が男子から可愛いとか言われてて癪に障ったから、ずぼらなとこを周りに言いふらして幻滅させてた」
「そっちもしてたじゃん。だから、お相子、お相子!」
「それもそうか。ちなみにどういう事を言いふらしてたか聞くか?」
「う~ん。聞いたら怒っちゃいそうだから聞かないでおく。って、もうお昼時じゃん。お掃除はご飯を食べてからにしよっか」
午前中にすべての掃除を片付けてしまおうと意気込んでいた。
しかし、もう気が付けば午後に入っている。
キッチン周りの掃除が終わり一区切りついているので、俺と涼香はお昼ご飯をひとまず食べることにした。
「涼香。恥を忍んで頼みたい事がある」
「ん~?」
「今日のお昼はオムライスにしてくれ」
「このこの~メイド好きさんめ!」
メイドさんと言えばオムライス。
ケッチャプで字を書いて、美味しくなるようなおまじないをしてくれる。
そんな印象を持つ人が大半だ。
まさしく俺もそうで、涼香に頼みたくなっちゃうのはしょうがない。
「で、答えは?」
「んふふ。良いよ。オムライスを作ってあげる!」
「ほんとお前って俺に優しいよな」
「そう?」
「いやいや、普通彼女と言えど、メイド服を着て? とか頼んでみろ。断られる場合だって普通にあるだろ」
「良かったね。私が色々としてくれるお嫁さんでさ」
「だろうな。お前ほど、色々してくれる子なんて探しても全然見つからないに決まってる」
「はいはい。じゃあ、何かしたいのに何も見つけられない。それが嫌でちょっと焦って落ち込んじゃった祐樹を元気にするオムライスでも作りますか」
そう言って涼香はオムライスを作り始めた。
で、20分も経たない内にオムライスを完成させた涼香は俺のためにケチャップで字を書いてくれた。
『あいしてる♡』
もうだめだった。
なんかもう意味が分からない位に嬉しくてにやけが止まらない。
だというのに、涼香はぎこちなくてちょっぴり恥ずかしい。でも、俺のためだからと言う雰囲気を漂わせながらオムライスにおまじないを掛けてくれる。
「おいしくな~れ、おいしくな~れ、萌え萌えきゅん♪」
でまあ、ここからがさらに可愛すぎる。
「えへへ。恥ずかしいね、これ」
照れ隠しで髪の毛を弄りながら、そう言う涼香の顔はリンゴのように真っ赤だった。
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