俺のお嫁さん、変態かもしれない （旧題：幼馴染と送る甘々新婚生活！）

第56話いざお買い物へ！！！

　休日の午前。

　俺と涼香は体を動かして汗を流した。

　シャワーも浴びて綺麗さっぱりになった時である。

　矢代先輩から電話が来た。

『文化祭での出し物について計画を立てたいんだが、今日って大学まで来れるか？　一応、小教室を申請して使えるようにしてあっから』

　と言う事だそうだ。

　別段何か予定があるという訳でもない俺と涼香は普通に大学へ。

　使えるように申請した小教室に向かうと、アウトドアサークルのメンバーがそこそこ集まっていた。

　まあ、全員が集まれるという訳ではなく、普通に少ない人数だ。

「よし、新藤夫妻も来たことだしは会議をはじめっぞ」

　サークル長の矢代先輩が仕切る。

　で、キュッキュッと小教室にあるホワイトボードに議題を書いてく。

『チュロスをどう売るか！』

「前回の会議でチュロスを文化祭で売ることにした。まあ、被りはするかも知れないが、そこまで被らないとは思う。で、だ。まずは仕入れ先を色々と調べて来た。業務スーパー、大型倉庫店で油を使わずトースターだけで簡単に調理できるものが売っていた。という訳で、もうすでに買って調理済みがここにある」

　ごそごそと袋の中から取り出されたのはこんがりと焼かれたチュロス。

　本当に何の味付けもなく、ただただそのままだ。

　大学に来るまでに山中先輩から聞いたのだが、今日はこのチュロスにどのような付加価値を付けて売りさばくか決めるつもりらしい。

「矢代ちゃん。食べるね～」

　山中先輩が矢代先輩が取り出したチュロスをパクリと食べた。　　

　すると悩まし気な顔で唸る。

「ん～～。びみょい。これに砂糖付けても、所詮はあんまり美味しくないチュロスって感じかな～」

「という訳で、このチュロスを美味しくする案を出せ。売れれば、夏のキャンプに掛かるお金が少なくて済むからな！」

　案を募り始めてから１分も経たないうちに山中先輩が叫ぶ。

「生クリーム！」

　ホワイトボードにトッピング案『生クリーム』と書かれる。

「チョコスプレー!」

「抹茶！」

「コーヒー」

「キャラメル！」

　ドンドン出て行く案。

　チュロスの味をどうするのか色々と試行錯誤するアウトドアサークルであった。

　１時間後。

　トッピングの案を決め終えた後の事だった。

　矢代先輩が神妙な面持ちで提案を述べる。

「え～、ここで俺から提案がある。売り子の服をメイド服にしてみないか？」

「……」

「……」

　場の空気が凍った。

　いきなり、メイド服を売り子の衣装にしようと言われたらこうなっても仕方がない。

「幸いうちにはアウトドアサークルだというのに女性が何名か在籍している。売り子の服がメイド服なら割と売り上げアップを狙える……はずだ。決して、俺の趣味じゃあない」

　真面目に言う矢代先輩だが、それでもなお周りの目はお前が見たいだけでは？　という冷ややかな視線。

　それに耐えながらも矢代先輩は言い続ける。

「メイド服は昨年メイド喫茶をやった所からただで譲って貰えるように交渉済みだ。で、女性陣。安心してくれ。俺らも着る。それで、手を打たないか？」

「あははは、なになに矢代ちゃんがメイド服を着るの？　いやいや、きもっ。あ～、でもそれなら私はメイド服を着ても良いかも」

　山中先輩が笑う。

　面白ければ何でも良しと言わんばかりな人が良い流れを作っていく。

　じゃあ、私もと手を挙げてメイド服で売り子をする提案が可決されて行った。

　まあ、それでも矢代先輩は最後には本当に大丈夫か？　って女子のサークルメンバーに聞いて回ったがな。

　ほんとうに気遣いの出来る人だとか思っていたら、涼香が手を挙げて矢代先輩に質問をしていた。

「腕周りは大き目ですか？」

「ん？　ユニセックスで作ったって聞いてるし、多分大き目だ。ああ、そう言う事か、祐樹がギプスつけてるもんな。腕周りが細けりゃ着れないもんな」

「そういうことで～す！」

　無事に俺も着れる事を確認した涼香は俺の方を見てニコニコである。

「そんなに俺のメイド服姿がみたいのか？」

「まあね～」

「さてと、メイド服についての提案も通ったことだし今日は今位でお開きにすっか。ほれ、小教室にゴミとか忘れて行くなよ～。今度貸して貰えなくなるしよ」

　こうして、文化祭へ向けた準備は着々と進んで行くのであった。

　メイド服を俺も着るのかあ……絵面がヤバくなりそうだ。

「さてと、涼香。俺達も帰るか」

「うん。帰ろっか」

「おっと、新藤夫妻。お前ら、ちょっと帰るのを待ってくれ」

　俺達だけ矢代先輩に呼び止められた。

「どうしました？」

「これから倉庫型のお店に冷凍チュロスの取り置きを頼みに行くんだが、お前らも来るか？　二人暮らしをしてるんだろ？　なんか買いたいもんとかあるだろ」

「え？　良いんですか！」

　めっちゃ食いつく涼香。

　二人暮らしを初めてバリバリ家事をこなす主婦っぽくなったこともあり、倉庫型の大規模店に興味津々なのだろう。

「もちろん良いに決まってんだろ？　んじゃ、車を用意すっから、少しだけ待て」

「あ、矢代ちゃん！　私も行きたい！」

「しゃあない連れてってやっか」

「やったぜい！　んじゃ、よろしく！」

　と言う感じで、俺、涼香、矢代先輩、山中先輩。

　この４人で倉庫型の大規模店に向かうこととなった。

　矢代先輩が車を取りに行っている間、待ちぼうけしている最中、涼香と俺は山中先輩に気になる事を聞く。

「あの、山中先輩って矢代先輩が好きなんですか？」

「……うわ～、新藤くんがえげつない事を聞いて来た」

「私もそうとしか見えません！」

　涼香の追撃も決まり、山中先輩は恥ずかしそうに微笑みながら言う。

「あはは、そうそう。矢代ちゃんの事、好きなのに気付いて貰えない乙女だっつうの！　これで、満足した？」

「じゃあ、お店についたら俺と涼香は二人で回るので、矢代先輩と仲良くどうぞ」

「……マジ？」

「うんうん。山中先輩、頑張ってください！」

「きゃ～、持つべきものは良い後輩だ！　ありがとね！」

　それから矢代先輩が車に乗って大学に戻って来るまで、山中先輩に矢代先輩をどうして好きになったのかを聞いて行く俺と涼香であった。

　色々と根掘り葉掘りと聞いた後、山中先輩はトイレに行くと言って俺達の前から姿を消す。

　で、まあ、自然に涼香と顔を合わせて笑ってしまう。

「っぷ」

「あはは」

　俺達の恋がいかにおかしくて普通じゃないのを改めて再確認してしまった。

　ついつい、笑ってしまうのは当然の事だろ？