第46話バカップルと自覚した結果。
月曜日。
俺と涼香は大学に行かねばならない。
土曜、日曜を使ってかなり涼香とイチャイチャした自覚はある。
満足して、心晴々とした気持ちで大学に向かう。
月曜の1限は涼香とは違う講義。
まあ、大学ではアウトドアサークルの集まり以外では、互いの日常に踏み込まないようにしているので、講義が重なろうとも横に座るなんてことは無い。
二人で一緒に居る事で、周りから接しにくいと思われ距離を置かれるのは御免だからな。
机に筆記用具を広げ、ぼんやりと講義が始まるのを待つこと数分。
俺の横に腰掛けてくる奴が一人。
「よ、この前はありがとな」
志摩だ。
土曜日、俺にデートでどうしたら良いか助けを求めて来た男である。
「気にすんな。で、あの後、俺から聞くような野暮なことはしてないが、上手く行ったか?」
「そこそこな。とはいえ、まあ、出会ったばかり、それも1回程度のデートじゃ、恋人になる方が珍しいっつうの」
「ま、期待できるのなら良いか。てっきり、見るも無残に散ったと思ってたしよ」
「ひでえな。にしても、新藤。お前の彼女さんってこの大学に居んだろ? 一体、どの子なんだよ」
「さあな?」
友達に彼女を紹介=嫁紹介の構図になってしまう。
なので、俺はあんまり彼女がいると公言はしているものの、会わせたり、顔写真を見せたりはしないつもりだ。
それこそ、俺と涼香が結婚している事で、少なからずとっつきにくさを感じ、去って行く人が居るに違いないし。
「ま、そのうち教えてくれよ?」
もちろん。
志摩は仲良くしてくれる友達。
正直、もうそろそろ話しても良いだろ。
そう思える相手なので、ずっと隠し続けるなんてことはしない。
「俺の事は置いといて、お前のデートについて聞かせて貰うとしよう」
「しゃあない。お前には助けて貰ってるし、話してやっか」
それから1限が始まるまでの間と2限の始まるまでの間、志摩のデート話を聞く俺であった。
さて、志摩のデート話なのだが、それは非常に有益だった。
何もかもも吹っ飛ばして結婚した俺と涼香。
少々どころか、超ぶっ飛んだ恋愛を繰り広げていることもあり、恋愛とは何たるかを知れて参考になる。
え? 田中と金田さんが居るだろ?
いや、あいつらはまあ……。
俺達が言える立場じゃないけど、特殊な例だしな。
とか思いながら、今日は2限で終わりだから、家へ帰ろうとしている時だ。
『美樹ちゃんに誕生日プレゼントを買おうと思うんだが、どっちが良い?』
田中から写真付きのメッセージが届く。
写真にはペアのマグカップが二種類並べられている。
どっちの柄が良いかと聞いて来たわけだな。
『右の方』
可愛めのデザインの方を選ぶ。
すると田中は『ありがとな』と返信をくれた。
俺とは単純な生き物だ。
バカップルと散々馬鹿にしてはいるものの、お揃いのマグカップとか普通に羨ましくて仕方がない。
「よし、今度買うか」
お揃いの何かが欲しい俺は今度、涼香と買いに行こうと心に決めたと同時に、背中を叩かれた。
「ん?」
「一緒に帰ろ?」
後ろを振り向くと涼香が居た。
涼香も今日は2限で終わり。
ちょうど俺の背中を見かけて、一緒に帰ろうと呼び止めて来たわけだ。
断る理由もなく、一緒に帰り始める俺と涼香。
歩き始めるや、田中から金田さんに誕生日プレゼントでお揃いのマグカップを買うつもりなんだがどっちのデザインが良い? ってメッセージが来た事を話した。
「良いな~。私も祐樹とお揃いのマグカップが欲しいかも。ねえねえ、今度買いに行こ?」
「俺もそう言おうと思ってたぞ。で、だ。なんと言うか、あれだよな……俺達ってよくよく思わなくても、田中達に負けず劣らずなバカップルだと気が付いた」
「……だね」
昨日の午前に届いたソファーで、膝枕をして貰ったり、抱き着いてきたり、ただ単に座っている時も、手を握ったり、色々とした。
その様子。
それはまさしく、バカップルそのものではないかと。
散々、田中と金田さんの様子を見て、あれはちょっと……とか二人で話していたくせにな。
「ま、別に良いか」
が、しかし。
すっきりとした気持ちだ。
ああいう風なバカップルになりたくないとか言っていた。
が、いざ自分たちがなっている事に気が付いても、別に同族嫌悪は抱かない。
それどころか、なんと言うか、もうバカップルなら、涼香とひたすらにイチャイチャして良いのでは? という気持ちが高ぶって仕方がない。
「しょうがないなあ。うんうん、バカップルだもん。ねえねえ、祐樹。じゃあ、バカップルっぽい事しても全然良いなら、一緒に湯船に入ろ?」
涼香が矢代先輩とご飯を食べに行って、ちょっと嫉妬した日。
俺が浸かる湯船に強引に入って来た涼香。
しかし、あれ以来、一度も一緒に浸かってはいない。
どうして急に一緒に湯船に浸かりたいだなんて言い出したんだ?
「一緒に浸かるのは、なんか凄く馬鹿っぽいな~って感じてたから、控えてたんだよ。でも、バカップルなら良いでしょ?」
俺が聞くまでもなく理由を話してくれる涼香。
こいつ、もしや……、まだ甘えるのを控えていたとでも言うのか?
「お、おう。あれだ。入浴剤使うか? そう言えば、お土産で貰ったし」
「うん、使う~。あ、ちょっと頼みずらくてお願い出来てなかったんだけど、祐樹にして貰いたい事があります!」
「良いぞ」
「右手が治ったら、私に同じ事をして欲しいな~。だめ?」
「今、俺が怪我しているから涼香に助けて貰っている事を、お前にしてやるって感じであってるか? それなら良いぞ」
「えへへ、バカップルなんだから、これから、も~っとたくさん甘えちゃお~。あ、もちろん、祐樹もい~~~~っぱい甘えてくれても良いからね!」
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