第4話

「なんかさー、今日雰囲気悪くない?」

皐月くんの言葉にドキリとする。隆一郎くんが頷いているのを視線の端で捉える。

出来るだけ態度に出さないように、気をつけていたんだけれど、創くんがいつも以上に話さない。視線も合わせてくれないので取繕うことすら出来ない。

もう3日も経つのに、あの夜の事を思い出して、まだ身体が震える。軽い身震いを覚えて自分自身で腕を掴んだ。

そのまま創くんに視線を送る。

新曲のダンスの振り付けに新曲の歌の練習。フォーメーションの確認に、衣装の打ち合わせ、

ジャケット撮り、MV、雑誌のインタビューに発売イベント……発売まで数カ月あるのに、やることは目白押しだ。発売してからだって忙しい。

ここで、マネージャーの俺が空気を悪くしてどうするんだ。

いつも通り、いつも以上にと気を張るたびに上手く行かないような気がする。


「盛山さん、疲れてるんじゃない、大丈夫?」

隆一郎くんが声を掛けてくれる。

心配させてしまった。ゆっくりと背中を撫でてくれる隆一郎くんの掌の温度が身体へと染み渡っていくようだ。

俺なんかより、みんなの疲労の方が心配だ。

まだスケジュールには少し余裕がある。

休める日は休みを入れよう。

「ん、大丈夫、ありがとう。発売までスケジュールが結構タイトだから明日休みにしようか。振り付け練習だけだから、明々後日に振り付けとフォーメーションと纏めちゃったほうが覚えやすいし。ライブも終わったばかりだから、元々休みの明後日と合わせると少しはゆっくりと出来るんじゃないかな」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

きらきら光の中 遠谷カナ @spica-kira

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ