第2話

打ち上げと言うものは、出演者だけではなくスタッフのためと言っても過言ではない。

流石にバイトの人たちは無理だけど、関係者全てを呼んでお疲れ様会を開く。

良いものを作ってくれた感謝と、これからもお願いしますの意味を込めて。


「天野、どうしよっか」

「珍しいよね、はじめっちが潰れるの」

「あんまり、酒強くねーのかな」

皐月くんが、創くんの頰を指先で突付く。小さく唸り声を上げるだけで起きる気配はない。

二時間ばかりで打ち上げを終え、会計を済ませると珍しく創くんが酔いつぶれていた。

「俺が送っていこうか?」

「隆一郎くんも疲れているでしょ、俺が送っていくよ。鍵もあるし」

一応、何かあった時の為に全員のマンションの鍵を預かっている。主に使うのは、寝坊グセのある羽柴貴一くんだ。その貴一くんの肩を借りて、創くんをタクシーに乗せると創くんのマンションに向かった。


よたよたと創くんをマンションに送り届ける。

――初めて入る創くんの部屋はただ広い部屋にベッドとギターと小さなテーブルがあるだけだった。

ちゃんとご飯食べてるのかな。少し心配になる。

彼をベッドに寝かせて、暫く様子を伺う。うん、大丈夫そうだ。 

立ち上がろうとしたとき、テーブルの上にある紙に気が付いた。

…新曲…?

ファイブナンバーの曲はアイドルらしくアップテンポの曲が多い。ただ、数曲メンバーが作った曲もあり、“輝く君の中で”は創くんが作ったラヴソングだった。

最初聞いた時はびっくりしたな。まさか、創くんがラヴソングを書くなんて。静かだけど、力強い、そんな秘めたる思いを持っていたなんて。

何度も書き直した跡が見える。その痕跡が彼の悩んでいるもの、そのものに見えた。

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