ババーンと解決だよ!アイナちゃん♪
はなまる先生
幼馴染のアイナちゃん
やぁみんな。
僕の名前は鈴木信夫だよ。
クラスのみんなからはモブオって呼ばれてるよ。
僕の通う私立クスノキ学園付属小学校には、ちょっと変わった生徒がたくさんいるよ。
中でも、僕の在籍する4年2組はとんでもないんだ。
その中でも一際に異彩を放つのが、
僕の幼馴染の女の子、高浜愛菜ちゃん。
彼女がどれくらい変わってる女の子なのかって説明を
「くそぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
―バシンバシンバシンバシン
おっと、左隣のクラスメイトが発狂中だ。
アイナちゃんよりも先に彼を紹介させてね。
教室の最前列ど真ん中、僕の席の左隣に座っているのは、青柳薫くんだよ。
幅広の四角い眼鏡におかっぱ頭で、いつもサスペンダー付きのズボンを履いているんだ。
ついたあだ名が名探偵。
でも僕は名前で呼んでるよ。
そんなカオルくんがなんと、
額を机に打ち付けて発狂しているんだ。
大変だ、どうしたんだろう。
「また負けたぁあああああああああああああああああ」
どうしたどうした、と周りの席の男の子たちが集まってきた。
「今月の、お小遣いを、全部、つぎ込んだ、のに!」
言葉を切るタイミングで、額を机にぶつけているよ。
クラスの女子がドン引きしてる。
止めさせないと、カオルくんの社会的な何かが危ない。
「オレを止めてくれるなモブオ・・・このぶつけ所のない怒りの業火がお前を巻き込むぞ・・・」
カオルくんは、ゲーム好きなせいか、ちょっと言葉使いがアレなんだ。
難しい言葉とか辞書で調べてきては、喜んで使ってるけど、アレすぎてアレなんだよね。
でもこのクラスじゃ一番の常識人って裏では噂だよ。
そんなことよりどうしたんだ名探偵、と周りの男子が囃したてる。
「モンスペって知ってるか?」
モンスタースペアのことだ。
テレビでよくコマーシャルで流れるスマホ用ゲームアプリだね。
最近流行っていて、スマホ持ちの男の子はみんなそれで遊んでる。
僕はお姉ちゃんがスマホを持ってるから、時々遊ばせてもらってるんだ。
このモンスタースペアは、略してモンスペって呼ばれてて、複数人プレイができるゲームなんだ。
基本的にはタダでできるんだけど、お金を使って強いモンスターを手に入れることができるみたい。
「あれな、ガチャでつえーモンスター手に入れたんだけどさ、今回のイベントが対人戦でなー。
モンスターの強さで、勝敗がつきやすいんだわ」
得意げに語るクラスメイトのつかさくん。
ガチャっていうのは、モンスペのゲーム内にあるガチャガチャのことだよ。
ゲーム内で集めたポイントや、お金を課金することで回せて、ゲームで使うモンスターが手に入るんだ。
現実のお金を課金してガチャを回すと、強いモンスターが手に入りやすいんだ。
つまるところ。
「世の中金だよ金」
あーやんなっちゃうなーと最後に呟き額を机にぶつけ、
そこで停止するカオルくん。
カオルくんは名探偵って呼ばれてるけど、その実態は強いモンスターで脳筋プレイするおバカさんなのだ。
ちょっと頭を使う遊びをやらせると、猪突猛進で考えなしなやり方ですぐ負けるタイプなんだよね。
その点、お金を使えば強くなれる最近のスマホゲームにどっぷり。
お小遣いは全部ゲームに食べられちゃうんだ。
制作会社の手のひらの上だね。
カオルくんは、呆然とした、魂の抜け切ったような表情を浮かべてる。
「あー・・・勝ちてぇな・・・」
ババーン!
こ、この効果音は!?
その時突然、教室の前の扉が、凄い勢いで開いたんだ。
「天が呼ぶ地が呼ぶ人が呼ぶ!
お悩みとあらば即参上!
魔女っ子戦士、アイナちゃんだよー!」
このクラスのアイドル、ツインテールの申し子高浜愛菜ちゃんだ!
どこから鳴るのか、いつも変な効果音と共に現れるアイナちゃんに、
みんながおはよー!と声をかける。
みんなに大人気アイナちゃんは「おはよんよん」と謎の挨拶と共に、くるくると回りながら教室に入ってきた。
そのまま綺麗な黒髪と一緒にくるくるくるくるくる・・・すたり、とカオルくんの前までたどり着く。
「お悩みなのはき、み、か、なー?
困っている人はみんなお助け!アイナちゃんの出番だね!
さぁさぁ悩みを教えてね!」
アイナちゃんが机に突っ伏したカオルくんの頭をコンコンと右手に持ったステッキで小突く。
すると、クラスの女子がわーっと集まってきて、
アイナちゃんにいつものアレをやってとせびる。
「アレ?しょうがないにゃー、一回だけだぞう?」
いつものをやってくれると聞き、女子みんなが目の色を変えた。
キャーキャーと盛り上がる女子たちに囲まれながら、アイナちゃんは、
二の足を広げ、右手のステッキを腰に回し、そのまま屈んで左手を右足に添える。
そして、右手のステッキを体の正面に、くるくると回しながら持ってきて、
対応するように左手は大きく弧を描いて、
「困っている人をみんなお助け!魔女っ子アイナ華麗に登場!
不思議な魔法の力で、みんなを助けてアーゲル♪」
最後にくるっとターンしてアーゲル♪っと決めポーズ。
キレッキレだった。
キャーキャーキャーとさらに女子が盛り上がる。
アイナちゃんが今やったのは、女子に大人気の特撮番組での決めポーズなんだ。
「『魔法でお助け?魔女っ子アイナちゃん!トライ♪』は日曜朝6時だよ!みんな観てるー?」
みてるー!と女子が大歓声。
隣のクラスの子達まで教室の外から大歓声。
凄いことになった。
そしてそして、なんとアイナちゃん、現役アイドルなのだ。
いまは魔法少女ものの特撮番組のメインキャラクターも演じてるんだ。
同世代で知らぬ子がいないほど大人気で、
しかも、現在3期目に突入。
もう3年くらい続いてる。
大きいお友達のみなさんにも大人気の一大ブームを巻き起こしてる超有名人でもあるのだ。
大人気の理由は、いつものお決まりパターンなんだけど…。
「それでそれで、名探偵くんのお悩みななんなのかな?かな??」
と、アイナちゃんが既にいつものパターンに入ってしまった。
「じつはかくかくしかじかで・・・」
「うんうんうん、それでそれで?」
「それがうんたらかんたらあーでそーでこーでさ」
「なんと、それはお困りにゃ!」
「▽〇×#▲&□¥?〇■!!!」
「なるほどね!了解承知うけたまわったー!」
何が・・・わかったんだろう・・・?
よくわからない会話だったけど、
スマホを片手に説明?したカオルくんから悩みを聞き出したアイナちゃんは、ステッキを構えたんだ。
いつもの流れすぎて嫌な予感しかしない。
「魔法よ、魔法、願いを叶えてねー!
みんなが幸せになぁれ♪」
不思議な光がステッキを覆う。
そして掲げると。
「ドスコイ!」
そのままステッキを振り下ろした。
カオルくんのスマホに向かって。
バキッ
あ、液晶画面が割れた。
「待て待て待て待てちょっと待てー!
うあー!俺のスマホうあー!!うあああああああああああああああああああああばばばばばばばば」
「子供はお金を使いすぎたらダメなんだぞーう?
良い子のみんなー!ゲームは1日15分!アイナの番組は30分だよー!」
アイナちゃんによって愛用のスマホを破壊されたカオルくんは半狂乱に。
そしてアイナちゃんは問題解決とばかりにババーンといつもの決めポーズ。
それを見ていた女子たちがキャーキャーと色めき立ち、
男子がみんな青い顔になっちゃったよ。
そう・・・これなのだ、アイナちゃんのいつものパターンは。
基本的に魔女っ子アイナちゃんは、ゴリ押し・お金・謎の力の三拍子で解決しちゃうのだ!
しかも解決方法はだいたい道徳的に正しい癖に、解決手段が力技なのだ。
もちろん番組においても、規模の大小に差はあっても解決手段は大体同じ。
涙を滝のように流すカオルくんを尻目に、アイナちゃんは女子の歓声に包まれるのであった。
僕を含めた男子はみんな・・・カオルくんを慰めた。
憐れみ純度100%だ。
ちなみに、アイナちゃんのステッキは特別製で何百万もするんだとか。
こうして、今日もアイナちゃんは、ババーンと問題を解決しましたとさ。
おしまい。
「問題解決っていうより、問題を抹消しただけなんじゃ」
「ノブくん?それ以上言ったら、メッだぞ?(はぁと」
僕は、アイナちゃんにおよそアイドルに似つかわしくないヤクザ顔で睨まれたので口を噤むのでした。
後日談
アイナちゃんにスマホを破壊されたカオルくんが世界に絶望した次の日。
自席でカオルくんは朗らかな笑みを浮かべていた。
どうやら、母親に普通のガラパゴス携帯電話と共に、自分用のパソコンを買ってもらったんだって。
しかも、一般家庭で使うようなものじゃないほどの物凄い高性能なパソコンなんだと自慢してるんだ。
急に買ってもらったとかで、家族兼用で楽しく使ってるとか。
どうしてだろう、と、珍しく朝早く登校していたアイナちゃんの方を見ると、目があった。
可愛らしげにウィンクをされた。
・・・アイナちゃんは謎の力でちゃーんと解決したみたい。
END
ババーンと解決だよ!アイナちゃん♪ はなまる先生 @shino616
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