私と後輩

高校時代のある初夏の夜のこと。

「滅べ人類!」

 そう叫びながら後輩の彼は私の寮部屋に転がり込んできた。私は彼に菓子を出してやる。

「他のは?」などと舐めたことをぬかすが、私は黙って出してやった。それから私と彼は馬鹿話をしながら一緒にゲームをして時間を過ごした。


 ゲーム中、「彼女できたんだよね。」私が唐突にそう言ってやった。彼は「どこの世界線の話?」と返してくる。ムッとしたが、日頃の行いを振り返ると言い返せない。が、私が言ったことは本当だったから、「リアルだよ」と言ってやった。

 彼は平然とした様子でゲームを続けていたが、彼の操作するキャラクターの動きが鈍くなっていた。彼が動揺すること自体、相当に珍しかったので、もう少し彼の反応を楽しもうと思った私は「なんか感想は?」と尋ねる。


 「ウケる」


帰ってきたのは棒読みなそんな言葉だった。なかなかに面白かったのでしばらく私は笑ってしまった。


今思い返しても奴は最高の後輩であった。元気にしているだろうか。

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なずな的落書き帳 なずな @mako_afraid

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