第5話 晴天の霹靂


 そんなこんなでクリスマスも終わり、悠斗は彼氏役を続ける事になった。なったのだが・・・。


 (誰かと付き合った事なんて無いから、何をすれば良いのかわかんない)


 ある金曜日の夜、悠斗はベッドの上で悶々としていた。スマホを握りしめながら。


 「浩之にでも聞こうかな・・・・」


思わずつぶやいた。


 (いや、絶対にからかわれるだけで終わる。・・よし)


 悠斗は覚悟を決めてスマホを操作し、電話をかける。


 先輩はすぐに出た。


 「もしもし、如月ですけど」


 「もしもし? どうしたの?」


 「あ~、今いいですか?」

 

 「うん、大丈夫だよ~」


 電話越しに軽く車や人の声がする。外出中のようだ。


 「今週の週末暇ですか?」


 「う~ん、うん。暇だよ。なになに? デートにでも誘ってくれるのかな?」

 

 「ま、まあそんな感じです」


 「そっか~。うん、うれしい! ねね、どこに行く?」


 (そういえば、何にも考えてない・・・)


 「そうですね。先輩は行きたいところありますか?」


 「私はね、見たい映画があるから映画が見れるところがいいかな」


 「なら、駅のショッピングセンターにしますか?」


 「いいね! あそこなら他にもいろいろ遊べるし。それじゃ、時間を決め」


 キキ―ッ!!! ドン!


 「・・・え?」


 いきなり電話に変な音が入ってきた。


 「先、輩?」


 ガヤガヤ


 ・・・おい、人がはねられたぞ! 誰か救急車!・・・・


 ・・・それよりAEDだ! 早く持ってきてくれ!・・・



 「先輩⁉ 返事してくださいよ、先輩!!」


 --------------------------2020年 2月23日 午後 白石愛華は交通事故にあった。


 居眠り運転で赤信号に突っ込んできたトラックがぶつかったのだ。幸い命に別状はないということだが、入院することになった。


 (けがについては知らされていない)


 部活の同級生にでさえも知らせていないらしく、どのくらいのケガで、どのくらい入院することになったのか、そもそもどこの病院にいるのかもわからない。


 「どうしよう・・・」


 事故から一週間、悠斗はずっと白石先輩のことを考えていた。授業にも部活にも身が入らない。気づけばいつも先輩のことを考えている。


 病院に行こうにも、どこなのかがわからない。こちらからメッセージを送っても既読すらつかない。


 「ハア、」


 「おい、大丈夫か? 悠斗」

 

 教室で悠人が無意識にため息をつくと、見かねたように浩之が近づいてきた。


 「ん? ああ、大丈夫だよ」


 「あのな、悩むのもいいけど相談するっていう手もあるんだぞ」


 「・・・お前って案外いいやつだったんだな」


 「おい、その言い方はないだろ。俺のガラスのハートが粉々になるぞ?」


 ※次回更新 3月1日 日曜日 0:00

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