第4話 イルミネーション


 「え~と、先輩?」


 「何かな。彼氏さん?」


 「確かに俺が提案しましたけど、なぜ俺が?」


 「だって、相談できる人って君くらいしかいないんだもん」


 「くっ」


 (普段、相談に乗ることがあるから気持ちが痛いほどわかる・・)


 「ふう。・・俺でよければ」


 「うん、ありがと」


 愛華はうれしそうに残りのコーヒーを飲む。入ってきた時とは違い、うれしそうな表情になっている。


 (まあ、この顔が見れただけで良しとするかな)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー時は流れ、クリスマス当日の夜


 「お待たせしました、先輩」


 「ううん、そんなに待ってないよ」


 悠人は今回髪をくくり、メガネをはずしている。こうすれば、変装にもなるからだ。


 「いつも通りの格好でもよかったのに」


 「先輩はどっちがいいですか?」


 「私がリクエストしていいの?」


 「まあ、彼氏役ですし」


 「ふふ、ありがと」


 愛華は悠人の前に出て、まじまじと悠人の顔を見つめる。


 「うん、やっぱりこっちでいいかも。すごくかっこいいし」


 「あ、ありがとうございます」


 (美少女に褒められるとなんか照れるな)


 「じゃ、行こ?」


 「はい」


 愛華は悠人に向かって手を差し出す。


 「・・・先輩、恋愛経験ないんじゃないんですか?」


 「ふっふっふ。お姉さんを甘く見ないほうがいいよー」


 「お手やらかにお願いします」


 二人は手をつないで歩き始める。駅から歩くこと5分、一面にイルミネーションが広がる公園に着いた。


 「へえ~、今年のは青を基調にしてるんだね」


 「先輩、去年も来たんですか?」


 「うん、家族と。今年は皆予定があるんだけどね」


 愛華はイルミネーションの中で一回転して悠人のほうに向き直る。たなびく髪からほのかにバニラの香りが漂う。


 「今日はありがとね」


 「いえ、俺の提案ですし。それにこの状況を誰かうちの生徒に見せなきゃいけませんよ」


 「そんなに意識しなくてもいいと思うよ」


 「え?」


 「周り、見てごらん」


 悠人が周りを見渡すと、通り過ぎる人の視線が自分に集まっていることに気づく。


 (く、ただでさえ人目は苦手なのに・・)


 「表情硬くなってるよ。大丈夫?」


 「ええ、接客中だと思って頑張ります」


 それから二人はイルミネーションを見ながら、他愛のない話をした。学校のこと、喫茶店オスカーのこと、部活のこと。


 (なんか、心地いいな。この時間は)


 「ね、さ、ここまで付き合ってもらって、悪いなとは思うんだけど、もう一つ、お願いしてもいい?」


 「ここまで来たらとことん付き合いますよ。なんですか?」


 「あ、あのさ、これからも彼氏役、やってもらえないかな・・・」


 「え、」


 「い、いやならいいんだけど、これで彼があきらめてくれるかわからないし、そのえっと」


 (なんでお姉さんキャラだったのに、いきなりあたふたしちゃうんだよ。かわいいとか思っちゃうからやめてくれよ)


 「お、俺でよければ」


 (こっちまであせる・・・)


 「そ、そっか。ありがと。その、これからもよろしくね」


 「こちらこそ、よろしくお願いします」

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