第2話 イブ2
部活後、駅のホームーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「あれ、」
「またまた奇遇ですね、白石先輩」
「まあ、部活終わる時間同じだし、おかしくはないけどね」
「そうですね」
しばし、二人の間に沈黙が落ちる。
「ねえ、」
「はい?」
「オスカーって何時までやってるの?」
「8時までやってますよ。・・・来ますか?」
「いいの?」
「来たいんじゃないんですか?」
悠人は半ばからかうように問いかける。
「う、うん。行く」
二人して電車に乗り込み、彼女は座り、そばに悠人が立つ。すると、すぐに彼女が口を開いた。
「部活の時は髪くくってるけど、普段はやらないの?」
「あ~、弓道やるときは危ないのでくくってますけど、普段はあまり。ほら、女みたいじゃないですか」
「まあ、綺麗な肌だよね。少しうらやましい。何か手入れしてるわけじゃないんでしょう?」
「は、はい。そうですね」
答えた後に悠人は思い出したように付け足した。
「あ、でもマスターやるときはくくってますよ」
「へえ~、そうなんだ」
そのあとは特に会話もなく、二人して寒い冬の空の下を歩いていく。駅からほどなくして、オスカーカフェに到着した。
カランカラン
「ただいま」
「おう、おかえり。ん、悠人、お客さんか?」
「うん、同じ弓道部の白石先輩」
「お、おじゃまします」
「そんなかしこまらなくてもいいよ。喫茶店なんだし。おし、じゃあ、俺は引っ込むから後頼むな、悠人」
「了解、マスター」
悠人はおどけたように答えると、彼女のほうを振り向いた。
「まあ、適当なところにでもかけてください。僕は着替えてくるんで」
「うん」
悠人は奥のロッカールームに入り、制服を取り出す。
(まさか、知り合いの前でこの格好をすることになるとはな)
着替えた後、メガネをはずし、髪をくくる。こうするだけで目立たない男子高校生からかっこいい系の女子大生にも見えるようなマスターに早変わりする。
(やっぱり、女みたいだ)
ロッカールームから出て、カウンター席に近づく。
「お待たせしました」
声もマスターをやるときはいつもよりはっきり出すようにしている。
「へ?・・・」
彼女は悠人がわからないのか、ポカンとした表情をしている。
「あの、先輩? 僕ですよ、僕。わかりますか?」
「ふえ? え、あ、いや随分変わるんだね」
「そうですかね、自分じゃよくわかりませんけど」
悠人はカウンターに入り、彼女に向き直る。
「では、改めまして」
「喫茶店オスカーカフェにようこそ」
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