ずっと…… 15



「僕さ、廊下で藍君と話してる時、思い出した事があったんだ」


どんな場面を思い出したのか、とても楽しそうだ。


「前の事務所で働いてた時、パートで来てた貴和子さんに一目惚れして、何度もデート申し込んだけど、僕、こんなだし、10歳下っていうのもあって、なかなかOKしてくれなくて、それどころか警戒されちゃってね。 まあ、今にして思えば、当然なんだけど、でも、何度目かで、ようやくデートしてくれる事になって」


へぇ…。 


「…それで?」


「それから何度かデートを重ねて、いい感じになってきて、まあ、プロポーズしたんだけど…そこでも、直ぐに返事してくれなかったんだ。 流石に僕の事、そんなに好きじゃなかったのかな?なんて、思い始めていたら、藍君が僕に言ってくれたんだよ」

 

「えっ。何て?」


「オイ、お前ら。いつの間にか、女子のノリになってんぞ」


「藍は、黙ってて」


「母は、達郎さんの事を愛しているので、もう少し待ってやっていただけませんか?てね」


「わお」

 

中学生とは思えないセリフ。



「で、藍君を信じて待っていたら、OKしてくれたわけなんだけど、後から聞いたら、その都度、貴和子さんの背中を押してくれてたのは、藍君だったみたいなんだよね」


「へぇ。何て言ってあげたの?」


「お前らなあ…」


「何て?」



だってこんな事、オレだけだったら、絶対答えてくれないし、藍の事、もっと知りたいもん。



「忘れた」

 

吐き捨てるように、ぷいっと横を向いてしまった。


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