ずっと…… 12
「愛さん? これからは、私達に気遣いは無用よ。何でも話してね。もう家族なんだから」
母さん…
「はい……」
「ふふっ。いいこね」
「愛さん…僕のせいで、ごめんね」
遠くから聞こえるので、オレに気遣って離れているのが解る。
「達郎さんの……せいじゃないです。オレの……身体の問題だから」
「さ、本人も納得してくれたから、部屋で休ませてあげて」
「お、おう」
椅子を引く震音の後に、ふわっと身体が浮いたのが解った。
何度目だ?の、お姫様抱っこ。
「ちゃんと休んでるのよ。良くなったら、カウントダウンの時、一緒に過ごしましょ」
何故か、恥ずかしさは無くて、素直にお母さんの話を聞く事が出来た。
*****
「…はい。……はい。 解ってます。大丈夫ですよ」
……ん?……藍の声…?
目を開けると、見慣れない天井に、真新しい布団の感触…。
辺りを見渡すと、藍の部屋だという事を思い出す。
あの後、ベッドに寝かされて、結局眠っちゃったんだ。
腕時計で確認すると、9時を過ぎたところだった。
ぁ…藍は?
足下に重みを感じ、見てみると、
藍がベッドを背もたれにして、座りながら誰かと電話で話している。
「……心配性だな。葵さんは。大丈夫ですよ。8時でいいんでしょ?」
…ぁ…仕事の打ち合わせか。元旦から仕事だって言ってたもんな。
「…え? ぁ…愛が眠ってるからっスよ。だから…」
寝てるオレに気を遣って小声で話してるのを不思議に思われたらしい。
「は?……ばっ…そ…そんなんじゃねぇよ。具合が悪いんだよ」
何を言われたのか解んないけど、敬語じゃなくなってますよ。
「はいはい。じゃ、良いお年を」
通話を終了すると、藍は「ったく!」と、小さく息を吐きながら、ローテーブルに携帯を置いた。
「……葵さんに何か言われたの?」
オレが眠ってると思っていた藍は、驚いたのか、勢い良くこっちを見た。
「起きてたのか?」
「うん。ヘヘッ……で、何言われたの?」
「…な…何でもねぇよ。それより」
と、枕元まで来ると、
「どうなんだ?」と、オレの前髪をかきあげながら、様子を伺ってきた。
「うん。大分楽になった」
「そっか」
ああ。この笑顔……大好きだよ。
「ヘヘッ」
「何笑ってんだよ」
そう言う藍も目尻が下がっていて、
そんな表情を見れるのも、恋人の特権というか……うん。幸せだと思う。
そんな時、コンコンコンと、ノックの音がして、お花畑から急に現実に引き戻された。
「はい」 藍が返事をすると、
「僕だよ。ちょっと話があるんだ」
…ぁ…達郎さんだ。何だろう。
「…今、行きます」
藍は、返事をした後、いつもの柔らかな笑顔をオレに向けてくれた。
そのおかげで、少し気持ちが楽になった。
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