誓い 15

玄関ロビーに着くと藍が待っていて、オレに気がつくと、いつもの包み込むような優しい笑顔で、オレを迎えてくれた。



ロビーを出て、タクシーに向かってると、藍がオレの顔を覗き込んできた。


「……何も無かったみてぇだな」


安心したように漏らしたその言葉の意味を知りたくて、藍を見つめた。


けど……、


「龍児さんらしいな」

て、小さく笑うだけで、何も教えてくれない。


「それ、どういう意味?」


「ん? 何でもねぇ」


ひとりでスッキリした顔して。


文句言ってやろうと思ったけど、

直ぐに「お願いします」と、タクシーの運転手さんに声をかけてしまったので、それ以上は何も言えなかった。


でも……、


……訊いちゃいけないんだろうな。


訊いてしまえば、何かが崩れそうな気がする。


藍も、たぶんわかってる。


だから、ちょっとだけハグされたことは黙っておこ……。



「なあ、今日時間ある?」


タクシーが走り出したところで、藍が訊いてきた。



「?…うん。荷物置いた後は、特に用事も無いけど」


「悪ィぃけど、買い物つきあってくれるか?」


「いいよ。何買うの?」


「んー、親に頼まれたんだ。正月の買い出し。あの雰囲気…オレの歳でひとりは、ちょっと…」


「…え?どこ?」



藍が行きづらい場所なんてあるの?どこなんだ?


そんなオレの表情に戸惑いつつも、藍の口から出てきた場所は…、



「……アメ横」




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る