誓い 10

上河内さんにメイクを直してもらった後、先にセットに入っていた藍の傍に行く。

藍がオレに気がつくと、「こっち。」と、手招きした。


「この出窓、愛のマンションと同じで、2人並んで座れるよ」

 

ホントだ。

 

そこは、オレの部屋と同じようにクッションが敷き詰められている。



「ま、景色は悪いけど」


早朝の演出のためか、柔らかなライトが窓の外から当てられていた。



「ここに2人で座ってると、出会ったばかりの頃を思い出すな」


「……え?」と、小首を傾げてみせると、


藍は、苦笑いを浮かべて窓の外を見つめた。



「……愛に、『金貰ってヤッてんのか?』とか、『好きでヤッてんのか?』とか、出窓で訊いたよな」


「ぁ…うん」



そうだ。藍の口から、そんな言葉を聞いて、酷く動揺したのを覚えている。



「『そうだよ。』て、言われたらどうしようって、内心ヒヤヒヤだったよ」


「……ぇ…?」


「だから、思い描いていた反応が返ってきて、すっげぇ嬉しかったな。あん時は、既にお前の事好きになってたから、確認の意味で訊いたんだ。

もし、無理矢理やらされてるとしたら…」


藍は、一旦言葉を切ると、オレの頬に触れた。


「もし、そうだとしたら…、守ってやろうと思った。オレが出来る最大限の力で、奴らから守ろうって。あんな奴らに愛は、触れさせないって。

今も、その気持ちに変わりはない」



……そうだったんだ…。


…やばい…


涙腺が緩んでるから、また…



滲む視界の中で、ぐるぐる考えた。


何て言えばいい?オレ…


今の気持ちをどう表したらいいのかわからなくて、オレの頬に触れてる藍の手に、自分の手を重ねて頬を押しあてながら、「ありがとう」と、呟いた。


自分の口から紡がれたその言葉は、思ったより小さくて、ちゃんと聞こえたか不安になったけど、

藍の反応を見て、届いたという事が解った。


あの写真と同じ、太陽のような笑顔がそこにあったから。

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