誓い 7


「その前に…」


「きゃっ…!」



急に、両脇腹に手を差し込まれて、変な声が出てしまった。

その声を聞いてうなだれる藍。



「あ…お…?」



ゆっくりと顔を上げた藍は、真っ赤になっていて…


「変な声出すなよ。力抜けんだろ」


「ぁ…ごめ…だって…」

 

「ぁ…いや…悪ィ。 このまま、話聞くの嫌かと思って、隣に下ろそうと」


真っ赤な顔を片手で隠しながら呟いた。

 


「ぁ…そっか。 自分で下りるよ。ごめんね」


「おう」



耳まで真っ赤だ。

うーん。 いつも思うけど、藍の赤くなるポイントが分からない。

だって、さっきまで平気でキスしてた人だよ?


オレは、隣に座って藍の肩に頭を預けた。



「愛もコーヒー飲むか?」


そうだ。まだ一口しか飲んでない。


「うん」



頭を起こして隣の藍を見上げると、

あっ…もう普通になってる。つまんない。


「ん?」


「ううん」


慌てて首を横に振り、コーヒーを飲む。


藍もマグカップに口をつけていて…画になるな…なんて、思ってみたりした。


そんなオレを見て、苦笑いを浮かべる藍。

見惚れてた…て、バレたのかな。



「オレさ‥」


マグカップを両手で包み込みながら、話し始めた。


「さっきも話したけど、先月の事件で、オレなりに考えた。 どうすれば愛を守れるか…て。 んで…出た結論。『愛は、オレのもんだ。』て、世間に宣言すれば、誰も愛に手ぇ出せねぇんじゃねぇかな_て」


「でも、それじゃ_」


「ガキの発想だっていう事くらい、オレにも分かってる。 今まで以上に愛の周りを騒がしくしちまう事も。 でも…それでも、あんなヤツらから愛を守りたい。 もう後悔だけはしたくないんだ」


「藍…でも…オレとつきあってるってだけで…変な噂が立つよ。 公表なんかしなくても…オレは今でも充分幸せだよ」



藍は、マグカップをローテーブルに置くと、オレのほうに身体を向けて、オレの目を真っ直ぐに見つめた。


「オレが、公表しようとしたもう一つの理由は、証明したかったからだ」


「ぇ…何を?」


「愛とつきあってても、仕事が出来るっていうこと」



ぇ…?



「もちろん、認めてもらうために葵さんに証明してみせたいっていうのは、あったけど、一番証明してみせたかったのは、愛にだよ」


「ぇ…?オレ…?」


「そう。今でもお前、オレの足枷になってんじゃないか?て、どっかで思ってんだろ?」



ぁ…



「やっぱりな。…ったく! いくら口で説明しても分かってもらえないなら、実行して証明するしかねぇだろ?

オレの仕事とか、オレの対面ばっか気にしてるみてぇだけど、オレとしては、目の前にいる今のオレを見ていて欲しい。オレ…幸せだよ。そんな風に見えない? これ以上何を望む?」



藍…


ヤバい…大好きな人の口から、『幸せ』の二文字が聞けて…


うっ…視界が滲む。


でも…でも、やっぱり…!


「…でもやっぱ、不安か?」


「……ぇ…ぁ…うん」


「そう思って、イタリアで実行してきた」


「実行って? 何…した…の?」


おそるおそる訊いてみる。



「…最終的な打ち合わせの席で、お前との事、告白した」



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