誓い 3


なんでパジャマなんだよぉ。

超恥ずいんですけど…!


上河内さんが部屋を出た後、オレが着替えた頃合いを見計らったように、男性のスタッフさんが呼びに来た。


少し前を先導する様に歩いていたスタッフさんは、「こちらでお待ちください」と、突き当たりにあったスタジオの前でオレを待たせ、中に入っていった。


藍ぉ。どこ行っちゃったんだよぉ。


こんな格好で待たされるオレの身になってみろよ。


それに…なんか冷えてきたし…。


一応廊下にもエアコン効いてるみたいだけど、エレベーターホールもあるし、そんなに暖まらないみたいだ。



そんなところに、藍が、ようやく登場。

スタジオの中から扉を開けて、顔だけ覗かせてる。


「待たせて悪いな。一応説明すると、”恋人と過ごす休日の朝“ ていうタイトルで、VIOLETのモデルがそれぞれ撮る事になって…。 女性のモデルを起用するっていう案もあったんだが…ごめん…オレの相手は、オレのワガママで、愛にお願いする事にしたんだ」



そっか…だから…パジャマなんだ_て…

いやいやそうじゃなくて、大事な事お願いしなきゃ。


「ねぇ…藍、オレ_、て……なんで顔だけ出してるの?」


「…笑わね?」


「?……うん」


オレの返事を聞くと、小さく溜息をつき、扉を開けて目の前に出てきてくれた。


うわぁ…!


「藍、凄い似合ってる!」


「……そうか?」


白いシルクのパジャマで現れた藍。


「オレも、いつものジャージ持ってきたんだけど、却下された。 オレって、こういうイメージなんだと」


シルクの光沢が、金髪に映えてとっても綺麗だ。

ホント…オレの天使。


普段の藍を知ってるから、こういうイメージ持ってなかったけど、

写真でしかしらない読者の皆様にとっては、こういう現実味の無いイメージなんだろうな。

ま…オレも最初は、そうだったけど。



「なんか落ち着かねぇな」


いろんな服を着こなしてきた藍が、落ち着かない…て。可愛い。


「ぁ…今、笑ったろ」


「笑ってないって」



そこへ、扉がカチヤッと開いて、先程のスタッフさんが顔を出した。


「すみません。お待たせしました。 お願いします」


と、扉を大きく開いて、オレ達を誘導した。



「紫津木藍さん、恋人役の如月愛さん、入りまーす!」


「お願いします」と、頭を下げながら、藍に続いて入っていく。


カメラ機材や、照明等の間を潜って入っていくと、そこには_


家のリビングが再現されていた。

しかも、出窓もある…!


うわぁ…オレんちみたい。



「どう?気に入った?」


と、小声で藍が訊いてきた。


オレは、ブンブンと勢い良く首を縦に振った。


藍は、オレの反応に満足そうに微笑むと、

息を大きく吸い込み、ハリのある声で話し始めた。


「本日は、オレのワガママを訊いて下さり、ありがとうごさいます!

彼が、恋人の如月愛さんです。 見ての通り、オレ達は男同士です」


藍? 何を…?


「この事について、これからVIOLETの関係者の皆様には、ご面倒を掛けてしまう事もあると思います。 ですが、決してご迷惑はお掛けしません! オレ達の事、静観して頂ければ、有り難いです。お願いします!」


腰を直角に折り曲げて、頭を下げた藍。

その後ろ姿を見つめながら、一瞬…何が起きたのか分からなかったが…


ちょっ…ちょっと待って!これって、マズいんじゃ?!




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