第3話 誓い 1
エレベーターで7階に上がり、廊下を歩き始めたところで、モデルさんっぽい男性が、部屋から出てきた。
「おっ! お久ぁぁ、紫津木!」
「おう! 恭介は、もう上がり?」
廊下で立ち話を始めるモデル2人。
やっぱり華やかだな。
藍に恭介と呼ばれていた人は、ふわふわの茶髪で王子様のような顔立ちなのに…着ている服装は、ロック…て感じ?
服装に詳しくなくて、ごめんなさい。
「後残ってんの、紫津木達だけだ。他のヤツら帰った後で良かったな」
恭介さんは、オレに視線を移すと、オレの顔の高さまで屈んで覗き込んできた。
「君が噂の愛ちゃん?」
「え? は…はい」
噂…て…?
「へぇ…可愛いじゃん」
「おい! 近ぇよ」
藍は、恭介さんの肩を掴んで引き離した。
「紫津木がヤキモチなんて、可愛くなったねぇ」
「うっせぇ。……余計な事言うなよ」
藍は困ったように口を尖らせ、そっぽを向いた。
藍のそんな表情が新鮮で、思わず笑みがこぼれる。
「オレ、並木恭介。紫津木と同じ高2。
コイツの武勇伝聞きたいなら、いつでもおいで」
「んな事言って無ぇで、帰れ!」
と、軽く蹴りを食らわす藍…。
「んじゃ、嫌われたくないし帰るわ」
「おう。冗談抜きで、今度3人でメシでも食いに行こうぜ」
「楽しみにしてるぅ」と、並木さんは手をヒラヒラさせながら、帰っていった。
「アイツ、ああ見えて結構苦労してるんだ」
と、小声で、恭介さんの後ろ姿を見ながら話し始めた。
「一見チャラそうだけどな。唯一のモデルの友人。 愛との事も話した」
ぁ…噂…て、そういう事か。
「…感じが北本君に似てるね」
「そうか?………まあ…オレ達の事聞いても、全く動じなかったのは、似てるかもな」
へぇ…
「信用してるんだね」
「……まあね」
と、照れたような笑顔を浮かべて、
恭介さんが出てきた部屋の隣の部屋を開けた。
「オレ、ちょっとスタッフに挨拶してくるから、この部屋で待ってて」
「うん」
突き当たりのスタジオに走っていく藍を見送ってから部屋に入ると、
沢山の衣装がハンガーに掛けてあった。
大きな鏡があって、ここでメイクしてるのかな?…なんて…近づいて見てみたら、
藍の写真が、何枚か貼ってあった。
うわぁキレイ…
まるで、おやゆび姫のように、大きな花びらに包まれていて……絵画のようで、美しかった。
これ…合成じゃないよね…?花びらの下に何も着ていない。
うわぁ…筋肉が、キレイ…
オレがそんな風に見惚れていると、コンコンコンと、ノックが…。
……え?誰…?
「……はい?」
「失礼しまぁす。」
現れたのは、元気良さそうなボブカットの女性。
片手には、メイク道具と思われるケースを持っている。
「…藍は、スタッフの方に挨拶に行くと言って、まだ……、」
「いやぁ!あなたが愛さんね? 会いたかったぁ!」
……はっ?
「あの…?」
「あっ…ごめんなさい。私、ヘアメイクしてます上河内です。よろしくね」
「はぁ…よろしく…おね…、」
「あなたが、あの紫津木藍の肌をボロボロにした人なのよね? 凄ぉい!会いたかったのよ。」
今この人、笑顔で何気に凄い事言ったよね?
「それじゃ…鏡の前に座ってね。」
「……え?オレ?」
「あれ? もしかして、紫津木君から何も聞いてないの?」
「ええ…まあ…」
「今日は、あなたもモデルさんなのよ」
は……?
なっ……!
何ぃぃぃっ?! 藍! どういう事?!
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