逢えなくても …… 15


藍がイタリアに旅立って、2週間が過ぎようとしていた。


藍からは、あのLINEを最後に何の連絡も無い。



どうしたのかな…? 心配だよ…。


忙しいだけだと思うけど…


……まさか…オレとの事が、先方にバレたとか?

それで、本契約出来なくて、ねばってるとか?



普段、冷静なのに、オレとの事になると、見境無くなる事が多いし…


それに…葵さんに、もう一度話してみる_て、言ってたから…



藍…… せめて…


「声が聞きたい」


「……明かりもつけないで、何してるんです?」



声と同時に室内が明るくなり、眩しくて、ぎゅっと目を瞑った。



「休まれてたんですか?」



一条さんは、ソファにうつ伏せになってたオレを見て、心配そうに訊いてきた。


聞かれた? 訳じゃないよね…?


明るさに慣れず、チカチカする目を擦りながら起き上がる。



「…ごめんね。大丈夫。ぼーっとしてただけだから…」



一条さんを見上げると、オレを見たまま固まっていた。


「……一条…さん?」



その瞳は、切なそうに揺れていた…


最近の一条さんの様子がおかしい。

いくら鈍いオレでも、分かる。

本人に訊いたとしても、たぶん話してくれない。


今…オレの傍に、一条さんが居てくれて、救われてる。

それと同じように、一条さんの傍にオレがいるという事に気づいて欲しい…



……ぁ…れ?


ちょっと待て…


オレが居るから…?


原因が、オレだとしたら…?



イヤイヤイヤ……でも…考えられるか…


そんな顔するの…オレだから…とか?


だとしたら…もう…オレのマンションに帰らないと…一条さん、ますます具合悪くなっちゃう…


けど…ネガティブ思考が、復活してるだけなのかな?


藍……オレ…どうしたらいい?



「……本当に…大丈夫ですか…?」


「…え?…ぁ…ああ、大丈夫だよ」



逆に心配されて、どうするんだよ。


オレの返事を聞いた一条さんは、「そうですか?」と言いつつ、まだ不安顔だ。


ぁ…それよりちょっと待って!


今何時だ?いくらなんでも、ぼーっとし過ぎでしょ。



「一条さん、ごめんなさい。夕飯の支度、全然出来てなくて…」


「それじゃ…たまには、気晴らしに食べに行きますか?」


と、彼は柔らかく笑った。


その笑顔が、無理して笑ってる気がして…

胸がぎゅっとなった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る