逢えなくても …… 11


なっなななんで?


なんで…藍が、一条さんになってるの?


ちょっ、ちょっと待って!



勢い良くベッドを飛び出し、壁際まで後退る。



まっ待って落ち着け!


もしかして…また、超リアルな夢見たとか?


そ、そうだ、そうなんだ。


そう考えると辻褄が合う。


だから、藍の匂いがしなくても、髪が黒髪でも…全然…気づかなかったんだ…


そう考えると、途端に虚しくなった…。


お互い見つめあって…笑って…


共同作業とか言っちゃって…また…

結局…独りだった…て事だ…


馬鹿みたい…



「……一条さん…今のは、忘れて下さい……単なる寝言です……オレ…また超リアルな藍の夢見てたみたいで…」


「……愛?貴方の夢は、3D なんですか?」


「……ぇ……っ?」


「貴方が着ている物を見てみなさい」



着てるもの?



ぁ…


ぁ……ぁぁ……ょ…よかったぁ…


藍の…


…藍の服だ…藍が普段、部屋で着てる服。


下の裾は、何段か折ってあるし、袖口からは、指先しか出てない…


藍…!夢じゃない!夢じゃなかった…



藍の服ごと自分を抱きしめた。


そんなオレを見て、一つ溜息を漏らすと、サイドテーブルに置いてあった眼鏡をかけて、ベッドの縁に座り、オレを手招きした。

隣に座れって事だ。


怒ってるんだろうな。


言われた通り、一条さんの顔を伺いながら、隣に座ると、スッと伸びてくる一条さんの手。


それは、オレの額の上で止まった。



「本当に、熱は下がったみたいですね。一時は、どうなるかと…」


「…心配かけて…ごめんなさい」


「…で、気にされてると思いますので、話しますが、藍君は今朝、イタリアに出発されました。今度こそ空の上です」


「…えっ今朝?…ぇ…と…藍が来たのは…?」


「…昨日です」


「ぇ…それじゃ…オレ…」


「…30時間以上は、眠ってましたね」


「…そ…そんなに…?」


「…30時間前、何をなさってたんですか?余程、体力を消耗しなければ、こんなに眠るなど、ありえません」


「……え…っ? ていうか…は? な…なんで答えなきゃいけないの?」


「…まっ…察しはつきますが…」


と、呆れたように、ため息をついた。



「…察し…て?」


一応、おそるおそる訊いてみる。


「…寝具のカバー類が、綺麗に洗濯されています。どんな理由で?」


「ぁ…ぇ…と…オレのキラキラで汚しちゃったんだ…ぁ…この服も、それで着替えさせてくれたんだと思う。ヘヘッ」


「…藍君の服は、別の意味もあると思いますが…」


「…別の意味…?」


「それは……、…ぁ…ぃぇ…」



一条さん…?



「…で?…先程の寝言は?」



…はぐらかした…?



「……愛?聞いてるのですか? 私は、貴方の身体が心配なんです。」


「…ぁ…さっきの寝言は…」


「…共同作業とかおっしゃってましたが…?」


「…それは…、」



一条さん、どうした?

オレの身体が心配なのは、分かるけど、

いつも以上に怒ってない…?



「ま…抱いて_とかおっしゃってたので、その一歩手前の隠語_て、ところでしょうか?」



うわぁ…


カァーッと、耳まで赤くなったのが自分でも分かった。


穴、穴は、どっかにないの?隠れてしまいたい!



「藍君も、藍君です。愛の身体が弱っているときに、自分の欲望を優先させるなんて。そんな事は、しない人だと思っていたのですが…買い被っていたようです。」



そ…そんな…



「藍は、悪くない。藍の事…そんな風に言わないで」


「…愛…、」


「オレが、強請ったから…。 藍は、最初断ったんだよ。こんな高熱なのにする事じゃない、ダメだ…て。 でも…オレがどうしても…て、我儘言ったから…次…いつ会えるか分からないから…その前に…て」


「…どんな風に強請ったんですか?」


「………え…?」


「頑なに拒否してる藍君を納得させたんですよね?どんな風に強請ったら、堕ちたんですか? 私を藍君だと思って、再現してみて下さい。」



ひょぇぇっ!なんで?


目が真剣だから、冗談じゃないんだよね…?


いくらなんでもおかしいよね?


なんで…一条さんにオレが迫らなきゃいけないの?



「私を納得させなければ、藍君との交際を認める訳にはいきませんね」



そんな…!


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