逢えなくても …… 6


藍は、何も言わない。顔も見れないから、伏せたまま、畳み掛けるように話を続けた。


「…感じるわけない…と、思っていても…声も…堪えてないと…出そうになるし…

それに…それに…腰が動いている…て、言われて… オレ…自分が怖い… 気持ちは…凄い…怖くて…怖くて…レイプまがいの事されてる筈なのに…ナイフで脅されてる筈なのに…身体が勝手に…

オレ…男娼体質…なのかもしれない…」



時間にしてみれば、ちょっとの時間かもしれないけど、沈黙が怖いオレは、

勝手だとは、わかっていたけど、助けを求めるように、藍の胸の辺りのシャツを握った。



「…ったく…」


小声で呟いた藍は、オレを抱きしめ直すと、クルッと身体を半回転させた。



「ひゃぁ…っ」


オレは、仰向けになった藍の身体の上に乗せられて、抱きしめられていた。



「 この体勢、辛いか?」



…ぇ?



「辛く…無い…」


「肌は?痛くねぇか?」


「……平気。藍は?重くないの?」


「…軽過ぎだっつーの…。も少し太れ」


「…うん…」


「…あのなぁ…」


「…うん…」


「男娼体質って言うけど、

そんな奴が、悩むか? こんなになるまで、擦るかよ。オマエさ、自分の事分かってない。それに…男娼体質の奴が、恋人のオレに、んな事打ち明けるかよ」


「ぁ…ごめ…ん…なさ…い…」



ちょっと顔を上げて、藍を見ると「まだだ」と、厚い胸板に頬を押しつけられた。



「オレが、安堂に言った事、覚えてるか?」



え…っ?


藍の口から安堂の名前が出ると、あまりいい気持ちはしないけど…藍のいつもと変わらない鼓動が、オレを落ち着かせてくれた。



「オレにしか感じない身体にしてやる。アイツらの事は、忘れさせてやる。

今でも、そう思ってる。誰にも二度と、愛に触れさせねぇ。 こんな時に一緒に居られなかったオレが言っても、信憑性ゼロだと思うが、もう少しだけ、待っていて欲しい」



藍の鼓動が速くなってる。

オレのもシンクロするように、速くなった。

些細な事だけど、ひとつになれたみたいで嬉しい。



「オレ…待たされてるなんて…思った事ないし…それに…忙しいのに…こうして会いに来てくれただけでも…嬉しいよ」


「ったく。そこは、『はい』だろ?

ま…そういうところも、可愛いけど」



そう言って、オレの髪を撫でてくれた。

オレも、それが気持ち良くて、されるがままにしていて、暫く、まったりとした空気が2人の間を包んでいたんだけど…


オレは、気づいてしまった。


藍の身体(一部)の変化に。

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