逢えなくても …… 4



「…下も、替えちまおうぜ」



藍が、身体を離そうとしたので、オレは、腕に力を込めた。



「…愛?」


「…もう少し…このままで…」


「…辛く…ないのか?」


「…離れるほうが…辛い」


「…可愛いこと言うなよ」


藍の胸に顔を埋めていたオレは、この時どんな表情だったのかは、分からなかった。


「…参ったな」



困らせてる?


一瞬、そんな思いが頭を過ぎった。



「…オレも…横になっていいか?」



…え?



「…その方が、愛も楽だろ?」


藍は、しょうが無いなと、笑顔を見せた。


オレって、凄い我儘言ってるのかも…


藍は、『ちょっと待ってて』と、オレを先に寝かせると、サッとスーツのジャケットを脱いで、傍にあった椅子の背もたれにひっかけた。


あれ? そう言えば…スーツ?なんで?


オレが、今頃?の疑問を感じていると、


「少しの間、こうしていて、目も瞑ってて」


と、オレの手首を持って、手のひらを両耳にあてさせた。



「エロい事はしねぇから、安心しろ」


そんな事…考えて無いもん…


口を尖らせたオレを見て、クスッと笑った。


その表情ですら、艶っぽい。

ダメだ…頭の中がピンク色だ。


オレは、大人しく目を瞑った。


暫くすると、布団が浮いた感覚と、ベッドの片側が沈むのが分かって…


それ迄以上に、鼓動が早くなった。


何を期待してるんだ?


いいから、鎮まれ!



「お待たせ。開けていいよ」


気持ちを落ち着かせながら、瞼をゆっくり開くと、

藍の顔が目の前に!


うわっ…近っ!


片肘をついて身体を支えながら、オレの顔を覗きこんでいたんだ。



「ほら…おいで」


だから…そんな、色っぽい目でオレを見ないで。


オレは、恥しくて藍の脇に顔を埋めた。


あぁ…ホッとする。



クックックッ


藍の身体が震えてる。



「擽ってぇ。クックッ オマエ、ホント脇の下好きだな」



だって安心するんだもん。


藍は、唇に笑みを残しつつ、腕をオレの身体の下に滑り込ませ、腕枕をしてくれた。


あれ…腕が素肌だ…


見ると、Tシャツ一枚になっていた。


もしや…と思って、布団の中を覗くと…


スラックス…穿いてない。



「…スケベ」



悪戯っ子のような笑み。


そんなつもりじゃないもん。


そう目で訴えると、クックッと、喉を鳴らしながら笑った。



「悪ィな。現地に着くまで、シワになるとマズいんだ」



ぁ…そうだ…イタリアは?


「成田 にいる時、警察から電話があって、葵さんと引き返してきた」


ぇ…でも…


「先方に直ぐ電話して…まあ…時間かかっちまったけど、一日だけ遅らせるっつー事で、なんとか分かってくれたから」


「…警…察…には?もう…行ってきた?」


「おう。オレは、そうでもなかったけど、葵さんは、時間かかってたな」


「変な事…訊かれなかった? 嫌な思い…しなかった?」



藍は、腕枕している反対の腕で、オレを抱き寄せた。


「何で、愛がそんな事気にすんの?」


「…だって…オレのせいで……それに…オレなんかの知り合いってだけで…本当に…ごめん…」


上から大きな溜息が。苛ついてる?


それだけで、不安になる。



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