事実と真実 13


一条龍児side



苦しい言い訳だったな。


下半身だけ寝汗が酷いって…



寝室に入り、ベッドの布団を捲ると、

やはり、シーツには、点々と血痕があった。


昨晩、上も脱がせた時に付いたものか…。


悪い夢を見ていたらしく、確かに寝汗は酷かった。



『止めて…触らないで…イヤ…』


涙を流していた。


涙を指で拭ってやると


『藍…』と、呟いた。


汗で額に貼り付いた髪を整えてやると


やはり『藍…』と。


頬を包み込むように触れると、


熱い吐息が漏れ……


唇で触れると、熱い吐息と共に、


可愛く啼いた…


首筋には、あの男に付けられた跡。


意識が飛ぶほど殴っておけば良かった。


跡を辿るように、服の裾を捲った。



あの野郎…こんなに付けたのか。


労るように、そっと跡に口づけた。



『ん…っ…はぁ…』



ん?



他の跡にも、優しくキスをしてみた。



『はぁ…っ…』



あの野郎…


愛が感じやすい場所に、跡付けやがったんだ。


それからオレは、全ての跡に上書きするように、触れるだけの口づけを繰り返し、

愛は、オレの手の中に藍君への愛を吐き出した。



この虚しさは、何だ?


愛を手放した2年間を埋めようと、焦ったのか…


ただ、唯一の救いは、藍君が上書きしてくれた夢だと、愛自身が思っている事。


嬉しそうだったな…


『良かった?』なんて…馬鹿な事を訊いた。


何を知りたかったんだ?


本当…馬鹿な事を…



オレは、シーツを剥ぎ取りながら、自分の気持ちも真っさらになればいいのに…と願った。



side end

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