事実と真実 3


イヤ…


早く逃げなきゃ。



「信じられないかね? しかし、大真面目な金額だよ? 君のパトロンになりたいとさえ思っている。」



パト…パトロン…?



「実は、ずっと君の事を私の物にしたくてね…。 毎回、安堂という男に、1本ずつ支払ってるのが、まどろっこしくて仕方無かったよ。」



…1本……支払って…た…?



…1本



安堂……やっぱり…お金…を…!


しかも…なんだよ…1本て、



「どうだね…? 悪い話じゃないと思うんだが。」


「……ぇ?」


「今の若い人は、パトロンなんて言葉知らないかな? つまり、君の人生のスポンサーになってあげるという事だ。 その代わり、…分かるね?」



ぁ…


男は、少しづつオレとの距離を縮めてきてる。



ゃ…やだ…


逃げなきゃ…



でも…進行方向を塞がれていて…



…怖い…



足が竦んで…歩けない…



「そんなに怖がらなくてもいいんだよ? 可愛がってあげるからね。」



今度は、本当にオレに近寄って来てる。



「つ…連れが待ってますので、これで…失礼します。」



怖くて…上手く口が回らない。



「彼には、私が話をつけてあげようか?」


「ぃ…いえ…結構です。」


「…残念だ。彼との契約もあるだろうから、仕方ないね。」



良かった…分かってくれた。



「…失礼します。」


「その前に_。」



男の横を通ろうとした瞬間、手首を掴まれた。



「10分でいい。私に時間をくれないか? 私のコレを何とかして貰いたいんだがね。」



そして、オレの手を自分の中心に持っていった。



ヒッ…!


人間、本当に恐怖を感じると声が出てこないもんなんだな…



男は、オレの手をグリグリとソコに押しつけ、「ぁ…」と、声を出した。


手を引っ込めようとしてもそれを許さず、今度は、下から上へと擦り始めた。



「やだ…やめ…やめて下さい。」



膝下が冷たく感じられ、ガクガクと震えだした。



「拒否すれば、従業員用の裏口から出

て、ホテルに行ってもいいんだよ?」



男のソレは、硬さを増してきた。


紳士の顔をしているが、少しづつ欲を吐き出したい、ただの男の顔に、なりつつある。


ここで大きな声を出せば、哲哉さんが助けに来てくれるかもしれない。

でも…

こんな汚い世界…彼には見せたくない… 


オレが…オレが自身で解決しなきゃ…。



「…分かり…ました…。でも…連れが心配するので…5分だけなら…。」


「ああ。いいよ。君となら5分で天国にイケそうだ。」



男に手を引かれ、先程出てきたトイレに再び入っていった。

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