好きだからこそ 12


紫津木藍side



「オレに何か隠してんだろ?」



目の前で、ココアメロンパンを頬張る北本を睨む。



「何かって?」



ヘラヘラっと笑って、オレの追求をかわす。


今は、昼休み。

オレら2人は、自席で昼メシを食っている。



「朝から、様子がおかしいんだよ。」



特にクラスの奴らは、顕著に表れている。


昼休みに入った途端、ソワソワしやがって。



「これから、何かあんのか?」


「別に?」



コイツに訊いてもムダか。


1つ溜め息をつき、北本がオレのためにと言って、頼みもしねぇのに買ってきてくださった焼きそばパンに、かぶりついた。



「…今日は、マキと食わなくていいのか?」


「…ああ。何か先約が、あるんだってさ。」



校庭を眺めながら、気持ちの入っていない返事が、返ってくる。


ったく…何だっつーんだ?


懐疑心だらけの気持ちで、北本を観察していると、さっきから、外ばかり気にしてるような…



「…誰か、待ってんのか?」


「誰かって?」



ずっと、この返しだな。


そうオレに気のない返事をしたと思ったら、急に姿勢を正し、カーテンを勢い良く閉めた。


何だ?



「ああっ!オレも、愛されたいな!」


「は? つか、どした?」



それより、今…教室の空気、変わったよな?


クラスの連中を見ると、ピタリと動きが止まっていて、逆に、オレの動向を見守っている感じだ。


そっちがそうなら、揺さぶりかけてみるだけ。



「オレ、ションベン。」



教室の後ろのドアを開けようとすると、クラスの2人が、目の前に立ちはだかった。



は?



「紫津木くん。モデルさんが、そんなお下品な言葉、使っちゃダメ。」


「オイ、北本。説明しろ。」


「それは…、」



『こちらは、放送委員会です。お昼の緊急放送をお送り致します。』



タイミング悪ィな。


オレは、北本に逃げられないように、胸ぐらを掴んで離さないでいた。



『2ーAの北本くん。主役は、拘束できてるのかな?確認のしようが無いので、勝手に進めます。』


「拘束されちゃってるけどね。」



何が始まんだよ。

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