好きだからこそ 9
翌朝、オレは、早くに目が覚めた。
サイドテーブルに置いてある時計は、5時半を示していた。
一条さんは、珍しくまだ眠ってる。
いつも何時に起きてるんだろ?
そろそろ起こした方が、いいのかな?
オレが起きる頃には、既に支度が終わってる感じだったし。
ぁ…オレが、遅過ぎるのか…ヘヘッ
もう少し、レアな寝顔を眺めてようかな?
結局昨日も、手を繋いで寝てくれたんだよね。
寝る前、少し怒らせちゃったみたいだけど、
何だかんだ言って、優しい。
よく見ると、整った顔立ち。
仕事中は、上がってる前髪に触れてみた。
そしたら、瞼がピクッとなって、ゆっくりと開かれた。
開いた瞬間に、目と目が合って
「ぉ…おはようございます。」
なんて、わざとらしい挨拶をしてしまったら、
一瞬、固まってたようだけど、直ぐに苦笑いを浮かべた。
「意地の悪い人ですね。いつから、眺めてたんです?」
「ちょと前だよ。」
こっちが焦ってしまう。
「直ぐに支度始めますね。」と、起き上がろうとしたので、
「早く起きた時位、オレがするから、ゆっくり出勤の準備して。」
と、一条さんを止めて、寝室を出た。
久しぶりに、まともな朝食を作り、無事、一条さんを送り出した後、腕捲りをして気合いを入れる。
今日は、天気も良いし、気分も良い。
昨日までの湿った空気や、気分を追い出すように、掃除に洗濯と、午前中を目一杯使って、フル回転させた。
なんか、本当に久しぶりに、人間の生活を取り戻した気がするな。
夕方になったら、買い物にも出掛けてみよう。
夕飯も作っておかなきゃ。
いつまでも、一条さんに甘えてもいられないし。
_の、はずだったんだけど…
ーん?
ぁ…れ…?
ぁ…携帯が、鳴ってるんだ。
ていうか、暗っ!
ぁ…?ああっ、そっか!
オレ、お昼食べた後、気持ち良くなって、ソファで寝ちゃったんだ。
ああっ、そうだ携帯…!
ポケットに入ってた携帯を取り出し、画面を見る。
ぁ…
「…北本くん?お久しぶりです。 文化祭の時は、ご迷惑かけてしまって、すみませんでした。」
『ぁ…いや…あん時のは、こっちにも責任あるから。 写真、出来てんだけど、最近、紫津木と会えてないんだって?』
「ええ…まあ…。」
そう答えながら、リモコンで、リビングの明かりをつけると、ソファに、きちんと座り直した。
『愛ちゃんに、渡してもらおうと思ったんだけど、紫津木のヤツから、そんな話をチラッと聞いて。』
それから、急に静かになったので、困ってるのかな?と、思い、
「オレが、貰いに行きますか?」と、提案すると、また、黙ってしまった。
『……愛ちゃん? 実は、紫津木が困った事になってる。』
「……ぇ?」
『アイツから、口止めされてんだけど、見てらんなくて…言うわ。』
「……うん。」
なに?なに?なに?なに?
藍の身に何が?
真っ黒な何かが、渦を巻いてグルグルうねりだし、オレの身体の中を蠢き出した。
『実は、学校関係者しか閲覧出来ないサイトがあるんだけど…、』
北本くんは、それから、その中のつぶやきのコーナーで、オレと藍の関係を面白おかしく書き込まれている事を教えてくれた。
『オレは、2人の事を知ってるから信じてるけど…中には、いろいろ勘ぐる奴らもいる。』
信じてるって…言ってくれたけど…オレに関しては、殆ど真実だ。
オレのせいで…藍が、誤解されてる。
『それと…、愛ちゃん不足が、原因だと思うんだけど、アイツ、校内で2年のヤンキーとケンカした。』
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