好きだからこそ 8
遅いな…一条さん。
お仕事忙しいのかな…?
夕方、一度戻ってきて、何やら紙袋を持って出掛けて行った。
その時に、遅くなるから先に休んでいて下さい。て、言われたけど…
一度、怖い夢を見てしまった寝室では、怖くて一人では、眠れない。
いい歳して恥ずかしいけど。
なので今オレは、リビングに毛布を持ってきて、包まってる。
お風呂あがりに着ようと思っていた、藍の部屋着も、何故か無くなってるし…。
その事も、オレを心細くさせてる理由の1つだ。
なので、もう1つのお守りであるネックレスを握りしめて、頑張ってリビングで寝ようと、目を閉じていた。
どの位経ったのだろうか。
カチャッ と、鍵を開ける音で目が覚めた。
いつの間にか寝ちゃってたんだ。
廊下を歩く足音に続き、リビングの扉を開ける音がしたので、それに合わせて毛布から顔を出した。
「こんな所で、休まれていたのですか?風邪でも引いたら、どうするんです?」
呆れ顔だ。
だって…しょうが無いじゃん。
「……寝室…ひとりじゃ、怖いんだもん。
だから…待ってた。」
ハッとしたように、目を見開いたが、直ぐに切なそうな笑みをこぼすと、持っていた紙袋を目の前に差し出した。
「それでは、これは、お詫びの印です。」
「…なに?」
これって、夕方の紙袋と同じ…だよね?
不思議に思って紙袋を覗くと、中には、真っ白なもふもふの生地で出来た_パジャマ?!
「これって、どうしたの?」
「紫津木さまが、愛さまに着せようと購入していたものだそうです。」
「…藍に会ったの…?」
「ええ…まあ…。」
と、きまり悪そうな顔。
まあ、いいや。これに免じて、訊かないでおいてやろう。
「じゃ…早速着てみるね。」
オレは、毛布をはねのけて立ち上がると、
「……っ!…あ!…あい…さま?!!!」
一条さんが、顔を隠しながら、2,3歩後退った。
え?何?オレ、何かした?
「何故、何もお召しになってないのですか?!」
「へ?…ああ。」
そうだ。何も着るものが無かったから。
上は、Tシャツ着てるけど、下は、ボクサー1枚だった。
でも…裸じゃ無いんだから、そんなに驚かなくても…。
「私、今からシャワーを浴びて参りますので、その間にキチンとお召しになっていて下さいね。」
背中を向けたまま、浴室に行ってしまいそうだったので、慌て背中にすがりついて、お礼を言った。
「ありがとう。」
「……いえ…失礼します。」
行っちゃった…。
呆れたのかな。
一条さんは、きちんとしてる人だから、こういうの許せないんだろうな。
お世話になってるんだし、パンツ1枚でウロウロするのは、止めよう。
一条さんが浴室から出て来たら、ちゃんと謝っておこう。
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