好きだからこそ 2


『手放すつもりは無い。』

そんな藍に、オレが出来る事ってなんだろう。


一緒に頑張っていける道があるとしたら…



はぁ…何も浮かばない…


今日は、寝ようかな…。


 

先に寝る事を告げるため、書斎の扉をノックした。



「はい。どうぞ。」


「…失礼します。」



扉を開けると、オレに背中を向ける形でPCのキーボドを叩いていた。


机の写真立ては、伏せられたままだ。



「先に休みますね。」



一瞬、手を止めたようだったけど、直ぐに、カタカタと音がし始めた。



「おやすみなさい。」



手元を止める事なく、背中を向けられたままの、事務的なものだったので、

オレも「おやすみなさい」と、そっと扉を閉めた。



一条さんのベッドは、ダブルベッドなので広い。


オレは、壁側のほうに潜り込み、目を閉じた。



暫くすると、廊下を歩く足音と、扉の閉まる音がした。


一条さん、これからお風呂なんだな。


しかし…はあ…眠れない…。


改めて目を瞑る。


夜中で静かなせいか、脱衣所の音が聞こえてきた。




カチャカチャ



シュルッ



ベルトを外す音と、抜き取る音


その音を脳が解析した瞬間


昔の記憶が、フラッシュバックされた。



欲望を放出したいがために、焦れったいとでも言うように、慌ただしく外されるベルト。


乱暴にズボンを脱ぎ捨て、ベッドに押さえつけるように、身体に覆いかぶさってくる顔の無い男


オレの衣服を剥ぎ取り、手首を縛り

身体中を散々舐めまわし、


そして…


自分の欲の塊をオレの双丘の……!



わあぁぁぁっ!!



ハァ…ハァ…



息が苦しい…


手の感触が身体中に、残っている…


暗い…暗い…やだ…怖い…



明かりを求めて廊下に出る。


でも、廊下も暗くて…


唯一、脱衣所の扉の隙間から、明かりが漏れてるだけだった。


オレは、その明かりに吸い寄せられるように扉の前まで行き、ノブに手を掛けたが、力が抜けて膝から崩れてしまった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る