別れの準備期間 9


翌日の夕方。


全て解決した。という電話を藍にもらった。



「…犯人判ったんだ?」


『愛は覚えて無いと思うけど、オレが、愛の玄関先で追い返したヤツらの一人だった。』


「会ったの?」


『会ったよ。』


「話し合い?」


『……まあ…そんなとこ。だから、もう気にすんなよ。』



上手く誤魔化された気がする。



「円満に解決したの?」


『……何で?』



核心を突いたのか、声色が変わった。



「藍が心配なの!また、ケガさせられたら?今度そうなったら、もっと酷い事されるかも……」


『………。』


「………藍?」


『あ?……わりぃ。…ぁ…直ぐにでも会いに行きたいけど、暫く忙しくなりそうなんだ。』


「?……そう…なんだ…。」


『葵さんが、殺人的スケジュール組んでるから…。』



ああ…オレと会わせないため?



「…分かった。お仕事なら仕方ないけど、高校は、サボっちゃダメだよ。」


「…わかってるよ。」



そう言いつつ、くっそー!とか言ってる藍が愛おしかったりする。




はあ…。



結局オレ……どうしたいんだろ…。


藍からの電話を切り、小さく息を吐いた。



…頭がパンクしそう…。



別れたくない。


はっきり言って別れたくない。


葵さんには、『別れる。』と言った。


その言葉に嘘は無かった。


オレのせいで、あんなケガして…


これからの事を考えれば、それが最善の策だと思った。


でも…解決したという電話を貰って、これからも、こうやって、ひとつひとつクリアしていけばいいんじゃないかと思ったり…


でも…傍に居たいと思うのは…オレのワガママなのか…と思ったり…



あぁぁぁっっ…!わかんない!



…そうだ


…外の空気でも吸ってこよう。


解決したんだから、もう外に出て良いはずだし…



藍と出会ったばかりの頃、

オレを公園に連れ出してくれた事があって…

それ以来オレは、何かある度に公園に散歩に出るようになっていた。


最近は、寒くなってきたからご無沙汰なんだけど…ヘヘッ



夕方5時も過ぎると、辺りは、すっかり暗くなっていた。


流石にこの時間は、誰もいないか。



オレは、公園の中に入る事は諦め、

公園前の通りをプラプラと歩き始めた。



暫く歩いていると、


あれ?こんな所にカフェなんてあったっけ?


藍の学校の近くにあったカフェと、雰囲気が似ている。


入ってみようかな。



扉の前に置いてある、黒板の手書きメニューを眺めていたら、

知らない男性に声をかけられた。



「待ち合わせですか?」


「……いえ…。」



大学生?位かな?


チャラい印象は、感じられないけど…

ナンパだよね?



「良かったら、このカフェで温かいものでも飲みませんか?」



女性と勘違いしてるよね?



「あの…オ、」


「あっれぇ?愛じゃね?」



背後から聞こえるその声に、聞き覚えがあった。

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