藍のアパートで…… 11



たぶん…オレの事後の姿を見て…

女の子の姿と重なったんだろうけど…



「……女の子は、幸せだったと思うよ…藍に抱かれて。

例えそれが、一回きりだとわかっていてもね。それに…」



次の言葉を言う前に、一呼吸置いた。

アイツらと、藍の決定的に違うところ。


それは…



「藍は…相手の気持ち…無視したりしないだろ?

強引に…ヤったりしない…だろ?」



最後の方は、本当に小声になってしまって…

藍に聞こえただろうか…?


でも、その心配は、無用だったみたい。


振り返った藍は、少し怒ったような顔をしていて……、それに驚いているスキに、思いっきり抱きしめられた。



「藍…?何か…怒っ…」

 

「馬鹿か?お前は…!」


「…ぇ…?ば…っ…?」


「さっきも下で言ったろ? 自分を大事しろって」


「?…うん…」


「オレの気持ちを上げるために…自分を…下げてんじゃねぇ…よ」



ぁ…



「…サンキュ…な…」



藍…



「愛…お前が、なんで泣いてんだよ」


「…ぇ…な…ぁ…藍が、泣いてるから…」


「…泣いてねぇよ」



藍は、クスッと笑うと、オレの額に額をつけて、「愛してる」と囁くと、顔をゆっくりと離した。



「一生、守ってやるって、誓ったのに…お前に、救われたな…」


 

藍は、オレを見つめて、照れ笑いを浮かべていた。



「…こんな時に言うのも、アレなんだが…」


と、何か言いづらそうに、横を向いてしまった藍。



「うん…何?」



話しやすくなるように、笑顔でその先を促すと、目だけチラッとオレを見て



「オレの過去にヤキモチ妬いてくれて、ちょっと嬉しかった」


「な…っ!」



イ…イケメンだからって、何言っても許されると思うな。



「ヤキモチじゃないもん」


「じゃ…何?」



意地悪な藍が、顔を出してきた。



「…恋人はオレなのに…アノ時の藍を知らないなんて、悔しくて…」


「なにお前、そんなにオレのイキ顔見たいの?」


「イキ顔だけじゃないもん!イク前も、イッた後も見たいの!」



ちょっとの間、目を丸くしていたが、



プツ…



クックッ



肩を揺らし、そのうち大きく笑い出した。


オレ…何か変な事言った?



「…愛…お前って、ホントすげぇな」



何が…?



「…敵わねぇよ」


と、まだ笑みが残る顔で、オレの頭をクシャッと撫でた。



「1つ、良いこと教えてやる」





「オレのイキ顔見たヤツなんて、1人もいねぇよ」


「ぇ…な…何で?」


「オレ、いつも最後は、バックだから」



言われた意味を理解するまで、時間がかかってしまった…。


なんか…あまりにも生々しくて、



「その情報…知りたく無かった」


「ホントは、ちょっと安心したろ?」



その、艶っぽい顔を見たら、

何故か急に、自分が全裸だということを思い出してしまい、恥ずかしくなって、布団を被って横になった。



「ぉ…お風呂入れてくるんじゃないの?」 


「そうだな」



布団の隙間から出ている、オレの髪をクシャッとしてから、下に降りて行った。



藍が下に降りて暫くすると、とってもいい匂いがしてきた。


そういえば…お腹空いたな。


ベッドヘッドに置いてある、藍の携帯を覗くと、21:00を過ぎていた。


どうりでお腹が空くはず…。


藍…何か作ってくれてるんだ…。


はあ…オレ…藍に甘えてるな…


さっきまでの事を思い出すと、顔から火が出るんじゃないかと思うくらい恥ずかしい…


藍…呆れてないかな…


そう思うと、ますます布団の海に沈みたくなる。



藍の匂い…


クンクン嗅いで、安心する。


抱き締められてるみたい…。



「風呂沸いたぞ」


「うわぁ…!」



心の中なんてわかるハズないのに…

ビックリした…。



「驚かすなよ…」



それは、こっちの台詞です。



「…行くぞ」



心臓が、バクバク鳴り止まないうちに、

藍は布団を捲ると、ヒョイとオレを姫抱きにした。



え…っ?

   

 

「このまま、風呂まで運んでやるよ」



ぇ…


ぇ…っ?


ぇ…えぇぇぇっ?!



「ぁ…藍?…無理だって」


「何で?」



ケロッとした顔で言われても、



「…どうやって?」


「お前抱えたまま、飛び下りる」



イヤーッ!!




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