藍のアパートで…… 3


藍は、オレの隣にドサッと座ると、オレを抱き寄せた。



「藍…」


「…オレも、もうガキじゃねぇ。 オレが生まれた事だけが、離婚原因の全てだとは思ってねぇ。

だが…離婚する大義名分になった事は確かだ。」



藍…


言葉が見つからない…



そっと背中に手をまわした。



「愛…。 ホント…お前と出会えて良かったわ。 オレが、こうしていられるのは、お前のおかげだ。」


「うん……オレも。」


「愛…」



耳元で囁かれ、そのままソファに押し倒された。


角度を変えながら、何度も与えられる優しいくちづけ…


それが、徐々に深いものに変わっていく



「……ん…っ…はぁ……」



その唇が耳に触れた…


藍の熱い息づかいが、オレの脳も蕩けさせる。 


 

「ひゃ…?!」



とっさに耳を塞ぐ。



「な…なに?!」

 

「舐めた。耳ん中…感じるんだろ?」


と、余裕の笑み。



「なっなななんで?!」 


「やっぱ、そうか。」

 


してやったりといった感じで笑ってる。


うっ…酷い



「怒るなよ。…これからもっと良くしてあげるから。」



そう呟くと、オレの着ていたパーカーを捲った。



「やっ…!」

 

「怖いか?」



首を小さく横に振った



「恥ずかしい…だけ…」


「…そっか。」



いつもの穏やかな笑顔を向けてくれたけど、

それが今は、艶っぽく感じられて…


 

「前にも言ったけど…怖くなったら直ぐに言って。 多分…止めてあげられると思うから。な?」



小さく頷いた。


なんだろう。恥ずかしいの通り越して、


怖い…


でも、あの時の怖さと違う…


藍は、労るような優しいキスをすると、

露わになったオレの胸の突起を指で触れた。

 

触れた…というより掠っただけなのに、

身体が、ピクンと反応する。



「…感じちゃった?」



耳元で囁かれて、それですら反応してしまう。


これから、オレ自身が、どうなってしまうのか…


わからなくて…


身体がどうなるのか…


どんな反応してしまうのか…



そんなオレを藍が受け入れてくれるのか…




怖い…




「愛?」



「え?」と、藍を見ると


 

すっと手を握られ



「…震えてるぞ。」



え…っ?



もう片方の手を顔の前に上げて確認した。


ホントだ…オレ…震えてた…



「愛?…もし怖いなら…」



ちがっ…


オレは、言葉より先に藍の首に腕を回して引き寄せた。



「違うんだ…怖いんじゃないんだ。あっ…でも、怖いのかな?」

 

「どっちなんだ?」



考えが纏まらない。

でも早く伝えなきゃ、藍の気持ちが変わっちゃうかもしれない。


 

「あの…ぇ…ォ…オレ…男だし…」


「今さらだな。」


「…胸無いし」


「…知ってる。」


「可愛くないし…」


「可愛いよ。」



藍の優しい口調につられて彼を見た。 


穏やかで、包み込むような優しい表情に、気持ちが落ち着く。



「一回、深呼吸しよっか?」



藍に促された通りに


スーッハーッ


深呼吸した。



「落ち着いた?」



コクっと頷くオレ。



「それじゃ、話してみぃ。じっくり訊いてやるから。」

 

「…うん…怒らないで聞いてて欲しいんだけど…」


「…怒らねぇよ。」


「…実はオレ…藍と…こういう雰囲気…慣れてない…ていうか、初めて…で……ていうか……」 


「ん?…初めて…て?」

 

 

藍が、不思議そうに見下ろしている。

 

そりゃそうだよね……


 

「オレ…あの日……安堂を追い出した日の……、あの時……、藍に姫抱きにされて…寝室に入るまでの記憶しか無い…」




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