藍のアパートで…… 2


「まあ…直接的な原因は、父親のDVなんだけど…」


「DV…」


「最初は、母さんにだけ…そのうち、オレにまで手を出してきて…んで、オレを守るために離婚した。」


「ぁ…で…でもそれは、藍のせいじゃないでしょ?」


「…そうじゃない。」


と、自嘲気味の笑みをオレに向けた。



「父親がDVを始めた理由だ。」



ぇ…?



「それは…オレのこの髪と瞳の色にある…。」



ん?  


その意味がわからず、小さく首を傾げてみせた。


そんなオレの目を逸らさず見つめて、



「…母さんの浮気を疑ったんだ。」



えっ? 


あまりにもサラッと言うもんだから、

オレは、思わず聞き返してしまった。



「えっ?…ていうか何で?」


「それは…」



そう呟くと、あっという間に距離を詰められ、抱きしめられていた。



「あ…藍?」


「……見せた事ねぇんだけど…」


と、やっと聞き取れるくらいの声で呟いて、オレをゆっくりと離した。



「…ちょっと待ってて。」



藍は、立ち上がってロフトに上がったと思ったら、直ぐに何かを持って降りてきた。



「…これ。」と、ローテーブルに1枚の写真を置いた。


オレは、藍の顔を見てから、その写真を手にとって見てみると… 



外国の赤ちゃんの写真だった。


いつだったか、ヨーロッパの王室のプリンスだったか、プリンセスの写真が公開されたが、

まさに、そんな感じで、

ふわふわのプラチナブロンドの髪

色白の肌にピンクの頬

青い瞳


誰なの?超可愛いんですけど!



「…それ…オレ。」



「はい?」



オレが聞き返すと、口元を片手で隠すようにふさいでいる。



ぇ…ぇっ…?



えっぇぇぇえっ~!



なに?なに?



だってこの写真、


 

「超可愛い!! 赤ちゃんの頃、こんなに可愛くて、大人になってもイケメンで! どんだけなの?」



写真と本人と見比べながら、叫んでしまった。



「何がだよ。つーか、見せておいてなんだけど、あんま見んな。」


「だってだって,すごく可愛いんだもん。 藍って、生まれてからずっと、イケメン街道から外れた事ないんだね。凄い。」


「んだよ…イケメン街道って…」



呆れ口調のその言葉に、写真から視線を本人に移した。



ぁ…オレ…バカだ…


本当に学習しないな…オレ。


前にも、こんな調子ではしゃいで、怒られた事あったじゃん。


自分の容姿だけを褒められるのは、好きじゃないんだ。


また、傷つけてしまっただろうか?



「藍…ごめ…」




プッ…クックッ




へ?




肩を小刻みに揺らしてる…


もしかして…笑うの我慢してます?



「…藍?」


「あ…悪い…」



笑い混じりに言われても…



「悪ィ。んな顔すんな。 お前って、変なテンションになると、言葉のチョイスが可笑しくなるのな。」



は?



「えーっと…?」



自嘲気味の笑顔をオレに向けた。



「藍…?」

 

「もし…ガキの頃…お前と出会っていたら、自分の事を好きになれてたかもな。」



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