第2話 向川祭 1


「すっげぇ似合ってる!超可愛い!」


「北本君……そろそろ説明してくれますか?」



オレは、北本君の何度目?かのそのセリフに苛立ちを覚え、

それでも、やんわりと訊いてみた。



「この服に着替えたら、意図を説明してくれるという約束でしたよね?」


「ごめんね。思ってた以上に、すっげぇ似合ってるから興奮しちゃって。これなら、マジで狙えるかもな。」 


「北本君…。」


「あっ……ああ。ごめん。」



今朝、約束通りに校門前で待っていると、待ってましたとばかりに北本君が小走りで迎えに来てくれて、そのまま腕を掴まれて校舎内へ。

3階に上がり、2-A喫茶店の前まで来たので、入るのかな?と思っていたら、スルーされ、

隣のお化け屋敷も通り過ぎ、

2-C 写真館 貸衣装多数あります!

に入って行き、

今、そのバックヤード的な場所にいる。

貸衣装の文字を見て、嫌な予感はあったには、あったけど…。



「愛ちゃんには、このまま喫茶店のヘルプについてもらうから。」


「人前に出るの?!」



キャバクラ的な言い方に突っ込みたくはなったけど、今は、そんな事どうでもいい。


オレは何故か今、向川の制服…それも女子の制服を着てるんだから…!


紺のブレザーまでは、藍と同じなんだけど、ネクタイがリボンタイになり、

グレーのタータンチェックのスラックスが、プリーツスカートになってる…。


しかも、これ…


「丈、短過ぎじゃないですか? パンツ見えそうなんですけど!」


「大丈夫だって。 そのために見せパン穿いてるんだから。」



へえ。そうなんだ…て、



「違う!そうじゃなくて、状況を説明してください!」


「透。まだ説明してないの?」


と、1人の女子が、このバックヤード的な部屋に入ってきた。


と言っても、教室の2/3位の位置に暗幕で

仕切っているだけの部屋なんだけど。



「早くしないと、時間になっちゃうよ?」


「そうだな。ごめん。コイツ、オレの元カノで細井マキ。」


「あの…よろしくお願いします。」



オレも他人の事は言えないけど、彼女もめっちゃ細くて、

身長は同じ位かな?

茶髪でサラサラのストレートのロングで、

うん……美しい人です。



「透…いい加減、元カノって紹介するの止めてくれる? おかげで、いまだに彼氏出来ないんだけど。」


「オレのせいだけじゃねぇだろ?」


「アンタの影響力って、紫津木に劣らずあるんだからね。透の元カノなんかに、誰も手ぇ出せないわよ!」


「あ…あの…?」



オレの存在忘れてませんか?

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