互いの気持ち 6



「なあ…?」


「はい。」



変にかしこまってしまうオレ…。



「……オレが、オマエのこと好きだなんて言ったから、気ぃ遣ってんの……?」



なっ…?!



「紫津木!」



オレは、たしなめるように睨んでやった。 



「悪ィ。何か…信じらんなくて………。」



紫津木は、さっきからずっと片手で口を押さえたまま…。



「参ったな……。」


「ん?」


「油断してると、口が緩みそうだ。」



紫津木……っ


その手に触れてみる。



「緩んだ顔が見てみたい。」


「馬鹿…引くぞ。」


「…いいよ。」



紫津木は、隠していた手を外し、その手で、オレの唇に触れてきた…。


紫津木を見上げると、艶っぽい瞳でオレの唇を見つめている。


徐々に近づいてきて触れる直前……、



「好きだ……」



囁いてくれた。


触れるだけのキスを角度を変えながら繰り返す……。



「紫津木……好き……」



その言葉に目を細めて、ついばむようにキスをくれた。


クスッと笑う紫津木につられて、オレも笑顔になる。


右手で、オレの頭を包み込むように髪を梳いてくれて……耳に触れる指が、妙にくすぐったい。



「さっきオレのこと…鈍感野郎つったろ?」



あ……


気持ちを何とか伝えたくて、つい…ポロッと……



「ごめんなさい。」


「オレに言わせれば、如月も、相当な鈍感野郎だ。」


と、意地悪な笑顔を浮かべた。



「へ?」



鈍感?…オレが?



「オレが如月にしてきた事…他の奴らにもしてると思ってたのか?」


ん?…と、片眉を上げてオレを見下ろしている。



「ぁ…いや…それは…」



そういう事…慣れてそうだったから…なんて、言えない。



「まあいいよ。」



そう笑って、オレを抱きすくめる。



「ありがとう…お前の勇気に感謝する。」



…うん…。



オレも背中に手を回す。


お互い、口角を上げたまま触れるだけの軽いキス。



ヘヘッ



照れくさくて、思わず笑ってしまう。


そんなオレの額にもキス。



何?何なのこれ?急に甘々じゃん。

  

そんなオレの口元が、自然に緩む。



「なあ?」



そんな甘々の彼が、オレの頭越しに何かを発見したようで…



「あれ、お前の服?」

  


視線の先を追うように振り返ると、


そこには、アイツらに剥ぎ取られたカットソーが、投げ捨てられていた。



「あ……」



白いカットソーが、薄いグレーのカーペットの上にのってたので、同調してて気がつかなかった。

 

あ…オレ…まだ、服着てなかった。


大きめとは言え、紫津木のブレザーからちら見えしてるオレの肌…。


途端に恥ずかしくなる。


でも紫津木は…


「怖かったな…。」



小さな声で囁いて、もう一度抱きしめてくれた。


 

ぁ……



オレは、彼の胸に顔をうずめ、身体を預けた。


紫津木の事…ずっと、ずっと、ずっと大切にして…

この先も、絶対、絶対、絶対手離さない。


本能的に、そう誓った。




ぐぅぅ~っきゅるる~っ




へ?!



見上げると、ばつの悪そうな顔。 



「悪ィ。腹減った。」

 


プッ…ククッ



「笑うなよ。」



拗ねた顔でさえ、愛しいと思ってしまう。


たまに見せる年下らしい姿が堪らない。



「準備してあるから、ちょっと待ってて。」



目の端に溜まった涙を拭いながら言うと、


「いいよ。オレがやるから。 先に着替えておいで。」



いつものしっかり紫津木に戻っていた。



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