互いの気持ち 4



一瞬……何を言われたのかわからなかった。 



その事に気づいたのは、紫津木の方が早くて


オレは、出遅れた。


気づいた時には、後頭部を抱えるように、紫津木の胸に押し付けられていた。


身動き出来ないオレ…。



「……今の……今の、どういう意味なんだよ?」



必死にもがいても、紫津木の腕は、びくともしない。



「紫津木……!」


「今の…て?」


「だから…その…好き…の意味だよ…。」



本当言うと、紫津木が、しまった!ていう顔をしなければ、気づかないでスルーしてたかもれない。



でも、オレ…


そんな顔されたら…


殆ど諦めてたけど、オレ…



期待しちゃうよ?



「オレの事…どういう意味で好きなの?」



この質問をすると、紫津木の鼓動がますます早鐘を打つ。


壊れちゃうんじゃないかと思うくらい。


それは、オレの鼓動とシンクロして…


もしかしたら、同じ気持ちなんじゃないかと思わせ…


ますます、ドキドキした。



「はぁ…ホントオレって、だっせぇな。」



溜め息混じりに呟くと、腕の力を弱めてくれた。


オレは軽く紫津木の胸を押して、くるんと顔をあげると、


紫津木は、自嘲気味な笑顔で「ごめんな。」と、呟いた。


「お前が、オレ以外の男を部屋に入れない…て、言ってくれた時…オレ、すっげぇ嬉しかった。」



ぇ…



「オレ…正義面してたけど、所詮中身は、アイツらと一緒だから…。」



えっと…


オレが戸惑っていると、


オレの右頬を包み込むように触れてきて、そのまま髪を梳くように、なでてくれた。



「お前のこと…一生守りたいと思っていた。」



?……それって…?


紫津木…?


笑顔を向けてくれてるけど、明らかに様子がおかしくて…



「如月…?」


「なに?」と、彼を見ると『バイバイ』

とクチパクしながら、手をヒラヒラさせた。



えっ……ちょっ…


急過ぎる展開に、頭がついていかない。


オレが、ほけっとしている間に、紫津木は立ち上がり、玄関に向かって歩き出した。



ちょっと待って、これは…!


えーとえーとえーとえーと


どうすれば?



何がどうなってるのかわからないまま、とりあえず、紫津木の後を追った。



「紫津木。ちょっと待って!」



振り返ること無く、スタスタ玄関に向かってる。


嘘…。


走って、ようやく玄関で靴を履こうと止まったところに追いついた。



「紫津木!」



オレの声を無視して、靴を履こうとしゃがみかけた背中に、抱きつく。


一瞬、ピクッとして背中が真っ直ぐになった。



「オレから離れろ。」



言葉自体は、冷たいものだったが、声色は温かかった。


その様子に、少しだけホッとするオレ。


でも…何から訊けばいいのか、何を言えばいいのか…


ていうか…紫津木、何考えてる?


えーとえーと……そもそも、何でこうなったんだっけ?


あ…



「紫津木?…何で安堂達と一緒だと思ったの?」


「それは…」

 

「うん。」


「考えてることが同じだから…。」


「考えてることって?」



オレの腕の中で、クルッと回ってこっちを向いた。


そして、オレの腕を振り解き、首筋に触れてきた。


反射的にピクッとなるオレ。 



「さっきの奴に付けられたのか?」



村井か…。痕付けてたんだ。



紫津木は、ゆっくりと伏し目がちに近づいてきた。



その表情は、とっても艶っぽくて見惚れていると、


首筋にまで顔が近づいてきて…


唇が触れた…

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