互いの気持ち 3



「…ああ、あれか…あれは、勢いで言っただけだから…気にすんな……襲ったりしねーよ。」

 


勢い……勢い……か……


……そうか…そうだよね……


わかってた……


そんなの、わかってたことじゃん……



「風邪引くから、服着ろ。ブレザーだけじゃ寒いだろ…?」



紫津木が……あんな事言うから……


少しはオレの事_て、友達以上のこと期待しちゃったけど……

冷静になって考えてみれば、そんな事あり得るわけないじゃん……。



「なあ。さっきからすっげぇいい匂いするんだけど。そういや、腹へったな。」



この先もずっと……こんな想いを抱えたまま、傍にいなきゃいけないのかな……。


そんなことを考えていたら、目頭が熱くなってきて……、


「如月……?どした?」



労るような瞳で、オレの顔を覗き込んでいる。



「オレ……お前に泣かれるの……すっげぇ弱い……。」



その大きな手で、オレの頬を包み込むと、親指で涙を優しく拭ってくれた。



ほら……優しいんだから……誤解しちゃうよ…


次々と溢れる涙に戸惑っているようだったが、オレも、自分の感情を止められなくなっていた。



「紫津木……。」



もうダメだ……話してしまおう……


そう決心して、紫津木を見上げると、

優しく腕を引かれ、彼の腕の中に収まった……。



「オレに、こうされるの嫌か?」



彼の胸をこするように首を振った。



「なら…このままでいいか? あんなことがあったばっかりだ……もし、怖いなら言ってくれ。」

  


紫津木の声が、彼の胸から聞こえてきて、とっても心地良かった。

  


「…ぶっちゃけ、如月が泣いてると…、抱き締めたい衝動にかられる。」



え…?



「でも…あんな事あったばっかだし…さっきは参った。 オレも、身体デカいし…怖いんじゃねぇかな…て。 だから…泣いてる姿見ないようにしてた。」



それでか……


紫津木の背中に、ソッと腕を回した。


紫津木の肩が、ピクリッと跳ねた。


あれ?嫌だったのかな?


またソッと腕を外そうとしたら、

強めに抱き締められた。  


オレの左肩に顔を埋めてる。



「オレ…いろいろな意味で、限界かも。」



紫津木の息で、左肩が熱い…。


て、…ん?……限界?

 

 

「紫津木?……ここ来るの、大変?」



フッと力が弱まり、肩から顔が離れた。


涙で汚れた顔だったけど、気になって顔をあげた。


パチッと目が合う。


一瞬、天を仰いでからオレを見下ろした。



「ああ!クソッ! 好きなヤツのそんな顔見るのは、ホント辛ぇんだって!」






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