互いの気持ち 2


「?……なんで謝った?」


と、顔を覗き込んでいる。


 

見ないで! 多分、凄い真っ赤だ。耳まで熱い……。



「変な奴だな……。」



そんな気持ちをよそに、オレの手をとり、再び処置を始めた。


オレばっかドキドキして…


紫津木は、何とも思ってないから平気なんだろうな。



「悪かったな……もうやらねぇよ。 真っ赤になるほど嫌だとは思わなかった。

ただ……液をかけすぎたから、早く乾かそうと思っただけだ…。」



この角度じゃ表情は、わからないけど、


たぶん……、


「怒った……?ごめんなさい……。」


「えっ?……怒ってねぇけど…。 嫌なことしたのは、オレだろ?」



真っ直ぐにオレを見つめてる。



「いや……あの……嫌とかじゃなくて……くすぐったかっただけだから……。」



とてもじゃないけど、感じたから……なんて言えない……!



「…ふぅん……まぁ…もう少しで終わるから。」


「…うん……。」



なんかこの構図って、


まるで王子様がお姫様の手の甲にキスしてるみたい


……って、何さっきから妄想してんだよ!


だって、オレの手を持つ紫津木の指が長くて綺麗で……

て、……あれ……?



「手……どうしたの?」


「ん?……ああ。」



気がつかなかった…。



丁度、処置が終わり、救急箱に消毒液と残ったガーゼをしまい、立ち上がった。



「あんま綺麗なもんじゃねぇよな。」



オレは、ブンブンと首を横に振った


今までオレは、何を見てたんだ…?


紫津木は苦笑しながら戸棚の中にしまい、オレの隣に座った。



「この拳は、中学の時にわざと潰したんだ。空手のためにね。」


「わざと……?」


「拳が平らなほうが、都合がいいんだ。」


「痛く……なかったの……?」


「まぁ……痛かっただろうけど……もう覚えてねぇよ。」



痛々しい表情で拳を見つめていると、紫津木は話を続けた……。



「今日……親善試合があったんだ…だから、遅くなった…。 如月を守る為にまた始めたのに、そのせいで、怖い思いさせるなんて、本末転倒だな…ごめん。」


「オレの…ため…?」



拳が潰れている紫津木の両手を気づいたら、握りしめていた。


この手で守っていてくれたんだ。

そう思ったら、自然と出た行動だったんだと思う。


一瞬…握り返してくれた…と思ったけど、

直ぐに振り解かれてしまった。


なんだろ…何もかも終わったせいで気が抜けてしまったのか、何かがはずれみたいで、紫津木への想いが、堰を切ったように溢れてくる。



「つー訳で、今日泊まっていくよ。 まだ怖いだろ?」


「えっ……でも……、」


「ああ、大丈夫。心配すんなって。 オレは、ここでいいから。」


と、リビングの床を指差した。


……オレの気持ちとは……やっぱり違うんだよね……


オレのこと守る…て、言ってくれたけど、

それは…紫津木の優しさ…?


昨日の女の子と一緒。

見過ごすなんて出来ないから…?


それとも、自分自身も関わってると思ってるから…?


紫津木の気持ち…知りたい。


オレ……もう……限界……



「紫津木……、」


「ん?」


「さっき、安堂に言ったこと……本当……?」



紫津木の表情が知りたくて、真っ直ぐに瞳を見つめた。



「安堂……?」


「……紫津木にしか感じない身体……とか……。」



一瞬、目を見開いたが、すぐに視線を外されてしまった。


……困ってる……?





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