決着 2
3時間前の向川高等学校2年A組
オレは、北本と話しながら帰りの支度をしていた。
「紫津木、これから空手の親善試合だろ?」
「ああ。」
「彼女も…来るのか?」
「彼女…?」
「昨日、他校から来てたショートヘアーの。」
女子…?
そうだな…オレも初めて会った時は、女だと思ってたんだよな…。
「…あいつは、大学生で男だ。」
他の奴だったら、絶対話さないが
北本には、話しておきたかった。
「へー?年上かよ? お前すげぇな_て、…えっ?…男?えーっ!! だってお前、昨日、あんな人前でイチャイチャしてたじゃん…!」
「そうだな…。」
これが普通の反応…。
オレだってあの日…男の裸に欲情するなんて、思ってもみなかった。
おかしくなったのか?と、さえ思った。
だから自分の気持ちを確認したくて、何日も通ったんだよな…。
でも、あいつへの気持ちが育っていくばっかだった。
「お前が守りたい人って、あの人…?」
「…変か?」
「いいんじゃね?…わかるよ。…オレも、あの人見てたら、そんな気持ちにチョットなったし…。」
「…北本」
「で、お前ら、つきあってんの?」
「いや…つか、お前…抵抗ねぇの? オレ…男を好きだっつってんだけど?」
「だから…さっきも言ったじゃん。あのコなら、わかるって…。」
「お前なあ…。」
「で…どうなの?」
と、急に真顔になる。
「あいつは…オレの気持ちに気づいていない。」
「コクらねぇの?」
「ああ…いいんだ…このままで…。」
むしろ、オレの気持ちに気づいて欲しくない。
オレに心を許して、オレ以外の男を部屋に入れないって決めてくれたのに…
ここでオレが気持ちを伝えてしまったら…?
あいつの気持ちを裏切るようで…
「これからずっと、あいつの事を守っていきたいから、ただの友達のままでいいんだ…。」
「そっか……ああ、でもなぁ。 校内一のモテ男が、そんな悲恋で悩んでるなんて、笑えるな。」
「うっせぇ。」
「失礼します!」
教室の入口に空手部の後輩が立っていた。
「部長から、紫津木先輩を呼んでくるようにと、言われてきました。」
もうそんな時間か…
「わかった。今行く。」
「じゃ、頑張ってこい。それから……今度、きちんと紹介しろよ。オレも、ゆっくり話してみたい。」
そのニヤついた顔は、気に入らねぇが、
ま…しゃぁねぇか…。
「…おう。」
拳同士を合わせて、会場の体育館に向かった。
*****
試合は、もちろんオレらの高校の勝利で終わった。
オレは、正式な部員では無いので、相手高への挨拶が終わり次第、帰れることになっていた。
なのに…なんだ?この状況は?
制服に着替えて体育館の外に出ると、うちの女子と相手高の女子が、一列に並んでいる光景が、目に飛び込んできた。
先頭で仕切っているのは、北本……。
オレに気づいて駆け寄って来る。
つられて女子の集団もオレに気づき、騒ぎ始めた。
駆け寄ってきた北本に、ヘッドロックをかけ、事情を説明させた。
「だってしょうがないじゃん。さっきまで、ちょっとした騒ぎになってたんだぜ? オレが、ここまでまとめたんだからな。それに、ファンは大切にしないとね。」
それさえ言えば、許されると思ってやがる…。
結局…解放されたのは、1時間も後の事だった。
…疲れた…。
溜め息が漏れる。
いつもの、営業スマイルに対する自己嫌悪と疲労感で、落ち込み方がMAXになっていた。
癒やされたい…。
すっかり遅くなっちまったな…。
自然と携帯を見てしまう。
おっ。着信…。
如月からのメールだ!
早速くれたんだな…可愛い。
早く会いに来て…か。
思わず顔がほころんでしまう。
ん?写真が添付してある。
オレのマネして、自撮りか?
口元が緩むのを手で覆って隠し、早速、開いてみた。
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