第9話 決着 1
翌日の昼下がり、出窓に座りながら、昨日の出来事を思い返していた。
紫津木のことを想うと胸がいっぱいになる…かと思えば、小さな隙間があって、抑えていないと、次々と何かが溢れ出てくる…
まるで、恋してるみたい…
今日で最後にしようと思ってるのに…
オレ…大丈夫か…?
昨夜、安堂から連絡があった時、会って話がしたいと伝えた。
早く決着をつけて、紫津木には安心して、大事な人の事だけを考えていて欲しい。
そう思ったから。
会えなくなるのは辛いけど…
紫津木の優しさに甘えてちゃいけない。
大事な人が、いるってわかったから…
知らないふりは、出来ない。
ジーンズのポケットから携帯を取り出し、電話帳を見る。
そこには、紫津木藍の連絡先と自撮りの写真。
さすがモデル。雑誌の表紙みたい。
自然に笑みがこぼれた。
昨日の帰り際
「そうだ。携帯かせ。」
意味がわからず、言われるがままに渡すと、手慣れた感じに何かを打ちはじめ、おまけに自撮り…。
「オレの連絡先入れといた。御守り代わりに持っとけ。」
もう会わない…て、決めてからもらうなんてね…。
昨日の女の子みたいに、記念にしとこう。
紫津木が好きだと言っていた、出窓からの景色を眺めた。
街路樹の木々が、風に揺れてキラキラ光ってる。
紫津木の髪も風に揺れて綺麗だったな…て、相当重症だな。
愛人じゃダメかな…。
ああっ…オレ何考えてんだ?
今日遅くなるって言ってたけど…
理由…教えてくれなかったな…。
やっぱり…大事な人に会いにいくのかな。
はぁ……。考えてもしょうがないか。
いつもより遅いってことは、夕飯作っておけば、食べてってくれるかな?
自分の向かえに座って、おいしそうに食べてくれる紫津木を想像する。
よし!ハンバーグでも作ってみよう。
安堂が来るのは夕方だから、下準備くらいは出来るよね。
キッチンに立っている間、口元が緩みっぱなしだった。
ハンバーグのタネは、こねて成型して、焼くだけにしておいた。
スープも作って温めるだけに
サラダも作って盛り付けるだけにした。
そして一息ついた頃
インターフォンが鳴った。
扉を開けると…安堂。
そして…
「こいつも、お話聞きたいっていうから連れてきた。」
「久しぶりぃ~!オレにもゆっくり聞かせて?」
一年前の出来事が脳裏をよぎる。
怖い…!
慌てて扉を閉めようとしたが、安堂が足を挟み込んできた。
「呼び出しておいて、つれないんじゃない?」
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