あの日 15



安堂は、他の友人も連れてくるようになって…

 

1人じゃなくて、複数で…


乱暴にされて……。


 


ここまで話した後、


オレは、たまらず掴んでいた紫津木のシャツをギュッと握った。


紫津木は、そんなオレの頭を宥めるように、優しく撫でてくれた。


その行為に安心して、また、話し始める事が出来た。





……安堂は、そのうち、自分が知らない人間も呼ぶようになって…


オレ…怖くなって、断ったら



「あの日、オレが帰った後、葵と2人で何やってた?」


て…。 



「実は、録音させてもらった。」


て…。



「あんたの、いい声も入ってるけど、葵の声もばっちり入ってる。 これをネットに流せば、世間はどう思うかな? 葵が好きな相手は?」


て、言われて…。



葵さんの名前を出されて…


葵さんの好きな人も出てきて…


守らなきゃ…て、


絶対、2人を悲しませちゃいけない…て、


そう思って、その日から考えることを止めたんだ。



人間じゃなくて、人形になろうって…。



「馬鹿か!! お前は、馬鹿なのか?」



ぇ…紫津木?


オレは、身体を起こして紫津木の顔を見ようとしたけど、頭を抑えつけられて、顔を上げることは、出来なかった。



「紫津木?…離してよ。」


「ダメだ。オレが話し終わるまで、こうしてろ。」


「何で?。」


「見られたくない…。」


「なに?」


「今のオレの顔、見られたくないんだよ!」



ぇ……


さっきまでより、紫津木の首が熱い…。


それに声が…



「泣いてるの?」


「…んなわけねぇだろ。」



そう言った紫津木の顔が、少し想像出来て…笑ってしまった。



「なに笑ってんだよ」


「ごめん。」


「ったく……いいか?話を戻すぞ。 オレは、葵さんのそんな姿を見たとしても、葵さんの事嫌いにならないし、葵さんだって、そんなものでビビったりしないと思う。 そのせいで、如月がそんな事になってたとしたら、なおさらだ。」


「え?…紫津、」


「何で、葵さんに相談しなかった?」


「え?…あ…うん……もう…葵さんの気持ちをオレの事で煩わせたく無かったんだ。 好きなひとの事だけを考えていて欲しかった。」   


「お前…ホント馬鹿だな。」


「何だよ。さっきから、馬鹿 馬鹿って…。」


「そうだろ? 葵さんは、そんなキャパ狭くねぇんだよ。 お前1人ぐらい増えたって、どうってことないっつーの。」



紫津木の言葉、ひとつひとつが


あったかくて


我慢していた涙腺が決壊した。


堰を切ったように溢れて


どうしようもなくて、止めようと思っても


紫津木の体温や心臓の音、オレの髪を撫でてくれる手のぬくもりが、

それを許してくれなくて


だから…


あいつらに弱味を見せまいと、我慢していた涙も


紫津木に心配かけたくなくて、やせ我慢して溜めた涙も、


流してしまおう。


今だけ、甘えさせてね…。



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