あの日 11


「ぁ……はぁ…っ」



直ぐに声を出すのは恥ずかしいと思ったけど、そんな体裁なんて吹き飛んでしまうほど、


気持ち良かった……


唾液を多く含んだ葵さんの口の中


それだけでイきそうだけど


直ぐにイクのは、さすがに恥ずかしいので、なるべく他のことを考えるようにした。

 


でも……



クビの辺りや先端を舌先で攻められ、裏筋をなぞられて……

 


ヤバい



「ぁ…葵…さん…出るから……離れ…て」



それでも、葵さんはかまわず続けてる。


幹の付け根からくびれまで、激しく上下され、先端を軽く甘噛みされた時…



「離れて……!」



葵さんの頭を軽く押したけど…


間に合わなかった。


頭の中が、真っ白になって……

 

乱れた呼吸を整えた後… 



あっ……葵さんは…?



慌てて見たけど、綺麗な顔のままで、


口角に付いたオレの体液を手の甲で拭っているところだった。



ぇ……?



「何…してるの?」

 

「近くにシャワー室無いから、みんな吸い取っちゃった。」



ヘヘッと笑う葵さん。

 

ヘヘッ…じゃないよ、葵さん。



「そんな事しないでよ。…汚いだろ。」


「汚い訳無いだろ?」 


と、屈託無い笑顔を見せる。



はぁ……もういいや。


考えるのは、止めよう。



「帰ろっか?」


と、また隙の無い笑顔。



オレは、コクっと頷いた。



はぎ取られたジャージと、ボクサーパンツを拾ってる姿を見ていたら、この人に好かれた人ってどんな人なのか、興味が湧いてきた。



「まだ、腰に力入らないだろ?履かせてやるよ。」

 


この人の笑顔の前に、逆らう気力も失せていた。



手際良く片足ずつはかせて、「首に手を回して。」と、言われたのでその通りにすると、腰を浮かせた僅かな隙に、パンツもジャージも履かせてくれた。


首にしがみついている時、ふわっといい匂いがして……。


ちょっとだけ、きゅんとした。



「あ…あのさぁ…好きな奴って、どんな人?」



突然のオレの質問に、最初、目を丸くしていた葵さんだが、直ぐに柔らかい表情になった。



「…あんま、人に話したこと無いんだけど…愛ちゃんだから、いいか。」



オレは、その場で体育座りをして聞く体勢に入ると、葵さんは、そんなオレを見て、クスッと笑った。

   


「オレの親父が経営しているモデル事務所のモデルで…すっげぇ男前だよ。」



はにかむような笑みを見せる葵さん…。



「ただ…1つの事に夢中になると、他がおろそかになるから…オレが、支えてやりたいんだ。だから…モデルも辞める。」


「未練は無いの?」


「ああ。元々、表に立ってるより、裏方の方が好きだったし…合ってると思う。」 


「オレからしてみれば、背も高いし、スタイルいいし、イケメンだし…もったいないと思うけどな。」


「ありがとう。」


と、照れてる葵さんが、少しだけ可愛いと思った。


それから、葵さんが車で来たというので、送ってもらうことにしたんだけど、オレのこと、姫抱きにして連れて行こうとしたから、おもいっきり抵抗してやった。


でも、あの笑顔で「何で?」なんて言われて…


拒否する力を削がれたオレは、

結局、姫抱きされて車まで連れて行かれた。


なんか……ハネムーン的な絵だな…なんて思ってしまって…

 

ひとりで焦った。



そんな変な曖昧な雰囲気に酔ってしまっていたオレは、直ぐに現実に引き戻されることになる。






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