あの日 8



*****




なんで……こんな事になってる……?



「ぅ…っ…」


「もう1本増やすぜ。」


「ぁ…っ…!はぁ…」



2本になった指は、それぞれ違う動きをして、オレの内壁を刺激する。

 

我が物顔で動きまわるその指に、オレの正気が失われそうになる。



でも……!


しっかりしろ!



抵抗したくても、オレの下半身は、別の生き物のように感覚が麻痺していて、言うことを聞いてくれない。


だから……



「堪えてる姿……クるわぁ。 でも……我慢しないで啼いていいんだぜ。」



絶対、声なんて出すものか……!


お前になんか、絶対感じてやんない。



「ローション持ってきて正解だったな。 もう一本イケんじゃね?」


「ぅ…!」



安堂は、乱暴に指を増やした。


そして、緩く出し入れを繰り返す。



「そろそろいいかな?」



と、指をゆっくり抜き取った。



え?…何が?


何…する気…なんだ?



カチャ



ベルトをはずし始めた安堂。



まさか……!



嫌だ!絶対嫌だ!



逃げだそうとしたけど、下半身に力が入らなくて立ち上がれない。



「ほうら、暴れんなよ。」



まるで、子供をあやすような声で、オレの尻をペチペチと軽く叩いた。



何で?!


何で、オレがこんな事されなきゃいけない?



「おーい!村井!入ってこい!」


「待ってました。」



その男は、勢いよくドアを開けて入ってきた。



「こいつ暴れだしたから、ちょっと抑えてて。」


「オッケー!」



そいつはオレの背後に回り、膝裏を持った。



こんな屈辱……なんでオレが?



「や……やめろ。」



オレの頭上で、ニヤニヤ笑う男達。



涙が溢れてきた。


悔しい……



「はいはい。オレの愛をたっぷり注いであげるからね。」



ローションを再び後に塗られたかと思うと、

そいつは、オレの中に入ってきた。



「っ!!」



声にもならない。


反射的に背中が反る。



気持ち悪い……吐き気がする異物感。



「締め付けてくんじゃねぇ。」



ゆっくりと動かし始めた。



「写真撮って、葵に送れ。」



え?…今何て?



「繋がってるところ、ちゃんと撮れよ。」


「わかってるって。」



カシャ



カシャ

 


その男は、何枚かアングルを変えて撮っている。

 


オレは、せめてもの抵抗で顔を背けた。



「後で呼ぶ。」と、安堂に命じられると、その男は、見張りにもどり、再び安堂と二人だけの空間になった。

 

教室中に、水音が響き、顔だけでなく、耳まで塞ぎたくなった。



何でオレを抱く?


抱きたいのは、オレじゃないだろ?


葵さんの恋人?


それとも、葵さん自身?



訊きたかったが、少しでも声を出すと、変な声を出しそうで……


唇を噛んで堪えた。


いろんなことを堪えた。


ただ、涙が溢れてくるのは、どうしようもなかった。



「泣くほど気持ちいいか?」


「ち……ちがっ……」

 

「違わねぇだろ。」



ニヤついてる。見なくてもわかる。



「オレなんか……抱いたって…しょうがないだろ?」


「は?」


「葵さんとは……なんも……関係…」


「まだそんなこと言ってんのか?そんな口きけないようにしてやるよ。村井にも楽しませてやらねぇといけねぇしな。」


「あっ…!…はぁ…んっ……!」



動きを急に速めたので、たまらず声が漏れてしまった。

 


「いいねぇ…クるわ。」



勢いよく奥を突かれ、オレの感情とは裏腹に、身体が反応してしまう。



「お前のは…ここか?それとも…ここかな?」



安堂は、自身のそれで何かを探っているようだった。




それが…



オレの中の、ある所を突いた…


思わず、声をあげそうになった時、


ドスンと、大きな音が廊下から 響いてきた。


一瞬の静けさの後に、今度は、引き戸が壊れるんじゃないか…と、思えるぐらいの勢いで扉が開いた。




そして…



 

「マサキ!…てめぇ!」



聞き覚えのある声…



安堂の顔から、さっきまでのニヤついた表情は消えた。



わかる……。


葵さんだ……。


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