男の子 6



どれぐらい泣いたかな……。



たぶん……身体は動くと思うけど…


動かす気になれない。



オレは、布団を頭から被りじっとくるまっていた。


そこへ、急に……、


視界の中に、男の両足が入ってきた。



えっ?!



凄い驚いたけど、悟られるのも怖いので、ぐっとこらえた。


その代わり、心臓がバクバクしてきて、変な汗も出てきた。




「如月さん?」



えっ?!


あの優しい声だ……!



ベッドサイドに両膝をつき、オレの顔を覗き込んできた。



うわぁ……紫津木くんだ…。



彼の顔を見たら、止まっていたはずの涙が、また滲んできた。



「泣いてたの…? 悪い……。 その涙は、オレのせいだね。」


「なんで……戻ってきたの?」 


「軽くパニクっちまって……。 悪かったな。」



そう呟いて、オレを抱き起こすと、

ギュッと抱き締めてくれた……。



「紫津木くん……?」



彼は、「そうだ。」と言って、身体を少し離すと、

急に慌てて明後日の方を向いてしまった。



「次の人って、いつ来るの?」


「えっ?」


「最初、玄関で会った人に間違われて……。」


「ああ……。」



安堂か……。


ネットで取り引きしてるみたいだから、相手の顔は知らないんだな。



「わからない……。」


「そっか……。」



彼は辺りを見渡して、床から服を拾い上げると、オレにそれを渡した。



「とりあえず、服着て。」


「え……?」


「いいから……。」



さっきから、オレと視線を合わせてくれない……。


なんか……チクリと痛む……。


服を着ている間、背中を向けて携帯をいじっている。


気を遣ってくれてる……のかな?


なんて……彼の背中を見ながら、そんなことを考えていた。




ジーンズを穿いて、カットソーを着てカーディガンを羽織った。

 

着替え終わったけど、紫津木くんはまだ気づかず、携帯をいじっている。


それはそうだ。


背中を向けてるのだから、オレから言わなければ気づくはずが無い。


こっちを見ないのは、紫津木くんの気遣いだろう……。


わかってる。


わかってるけど……、視線を合わせてくれなかったことが引っかかってしまい、訳もなく不安になる……。



「……紫津木くん……。」



思わず、名前を呼んだ……。


彼は肩越しに一度振り返ってから、側まで来て、

「よし。」と言うと、オレの頭をくしゃくしゃっとした。


オレの目を見て笑ってくれた……。


それだけで、ホッとしたし、

ほわっと、温かい気持ちになった。

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