男の子 7


「それじゃ、散歩いこっか?」


「え……?」



言い方は優しかったが、拒否できない押しの強さを感じてしまい……


「はい。」と、二つ返事でOKしてしまった……。 


次来る人なんて知らない。


もうどうにでもなれ!



でも……


すっぽかしたことなんてなかったし……


どうなるんだろ……



「如月さん……?」



心配そうに、オレの顔を覗き込む彼……。


あぁ……


今は、紫津木くんとお散歩したい……!

  

そんな彼に、「なんでもないです。」と笑顔で応えた。



「大丈夫?立てる?」


「はい……。」



ベッドサイドに手をつき、立ち上がろうとした瞬間、

足元がふらつき、紫津木くんの腕の中にポスッと、収まってしまった……!



「ぁ……ごめん……!」



オレは、慌てて離れようとしたけど、彼に腕をつかまれてしまい、動くに動けない。


 

「やっぱ、直ぐに立つのは難しいか……。」



そう呟くと、オレを軽々と姫抱きにした。



「ひゃぁ……!」



突然のことで、変な声が出てしまった。


恥ずかしい……。



「ちゃんとつかまってて。」


「えっ……? このまま行くんですか?」


「目の前の公園までだから。」


「いくらなんでも恥ずかしすぎます。」


「そう? じゃ……オレの胸に顔埋めてろよ。」



いや……そういう問題じゃ……


でも……


相変わらずの、押しの強さに再び屈服……。


言われた通りに、顔を埋めた。




玄関で靴を履かせてもらい、外に出て鍵をかけ通路に出た。



どうか誰にも会いませんように……!



通路をぬけ、エレベーターホールに到着。



誰も乗ってませんように……!



エレベーターのドアが開き、誰も乗っていない事が確認出来ると、ホッと息をついた。

 


オレだけなのかな? こんなにドキドキしてるの。


そもそも、こんな事になってるのは、オレがあんな事してたからで……。


その事……紫津木くんは、どう思ってるんだろう。



彼を見上げると、普通に前を向いている。



そんな彼と、目が合ってしまった。


視線感じたのかな……。


妙に焦って、ドキドキしてしまう。  



「どした?」


「ぁ……重たいでしょ?」



一瞬、キョトンとした顔をしたが、すぐに戻った。 



「何言ってんだよ。こんな華奢な身体して。その身長で、50無いだろ? ちゃんと食ってんのか?」


「ええ……まぁ……。」



確かに彼は、軽々とオレを運んでる。


ここまで抱き直すことも無かったし、

自分の体重に対する重力を感じない。


凄い……。


鍛えてるのかな?



「紫津木くん、何かスポーツやってるの?」


「ん?あぁ……空手。 最近、仕事が忙しくて、あんまやれてねぇけど。」


「空手? かっこいい!」



マズ……!

 

思わず本音が……!  

 


「…サンキュ……。」

  

「ぇ……?」

 


見上げると、少し顔が赤くなってて、明らかに目が泳いでる。

  

紫津木くんも動揺する事あるんだ。


そんな彼を見て、オレもドキドキした。



「なぁ……紫津木でいいよ。オレも如月って呼ぶから。」  


「ぇ……?うん!ありがとう!」


「ありがとうって何だよ……。」

  


だってだって、凄い嬉しい!


友達になれたってことだよね?  


あんなとこ見られて、引かれてるって思ってたし……。 


良かった……。

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