男の子 3


「シャワーは……?」


「今日は、いい。速攻ヤりてぇから。」



安堂あんどうは、オレの身体を引き寄せた。

それをオレは、精一杯の力で押し戻す。

 


「逃げないから、寝室まで待って。」



安堂あんどうは、オレが焦らしたと勘違いしたようで、

さっきよりも、目がイッてる。


廊下側の入り口から、寝室に入った。


ただオレは、こいつらとの行為を寝室以外で思い出したくない。


……それだけだ。



安堂あんどうは寝室に入るなり、唇を重ねてきた。


そのまま、ベッドに押し倒される。


オレの上にまたがる形になり、シャツを脱ぎ始めた。


ボタンを外している間、ずっとオレを見つめながら、舌をペロペロしてる。

煽ってるつもりなのか……?


ていうか、こいつに感じた事無いし…。


あの日から、何十回もこいつとやってきたけど、

感じた事は無い……。


気を遣って、演技するなんて事も考えられない。


ただ、ただ、時間が過ぎるのを待つだけ。


オレのも、弄られたりするけど、条件反射で出るだけ。


自分自身を守るため。


自分が壊れないように


あの日、決めた。


こいつらの征服欲を満たし


気持ち良くさせて


早く終わらせる


それだけを考えるロボットになる……。



1年間、そうしてきた。



「なぁ……もう挿れていい?」

 


胸の突起物に舌を這わせながら、訊いてきた。


好きにして。



「どうぞ。」



安堂あんどうは、慣れた手つきで、サイドテーブルの引き出しから、 ローションを取り出した。

    

後にひんやりとした感触。


いつもの事。


繰り返される行為……。



「お前の顔を見ながらイキたい。」



そう言って、膝裏を持った。


こんな恥ずかしい格好も、もう慣れた……。


少しずつ侵入してくる……。



その時……、



『こんなので良かったら、いつでも貸すよ。』



紫津木くんの声と


温かい眼差し


頭の中にボワッと浮かんできた。



うわぁ!



声に出来ない叫び声を心の中であげる。


何でこんな時に思い出すかな……。

 


「おい!」

 

 

その声にハッとして安堂を見る。



「お前……やっぱ好きな奴出来ただろ。」


「……えっ?」


「身体が、拒否ってるんだよ。」


「そんなわけないだろ。」


「まぁ……別にいいけど。拒否られてると思うと、逆に萌えるし。」



バカだな……こいつ。



でも何で? 


何で思い出しちゃうかなぁ。



バカなのは、オレだ。


こいつに抱かれる事は、何とも思ってなかったのに


今思い出したら、


苦痛以外なにものでもなくなる。



早く……この時間が終わって欲しい。



オレは、泣きそうになるのをぐっとこらえた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る